sleep | ナノ

絹糸みてぇだな…。
氏康は心の内でそう呟いた。

指先をさらさらと滑り落ちるその感触が、とても柔らかく心地好い。
何度も掬い取っては、高く持ち上げてさらさらと指先から滑り落とす。
なまえの長くしなやかな髪が、何度も何度も氏康の指先に捉えられては落ちてゆく。

そんな氏康の行動には気付かぬまま、なまえはすやすやと深い眠りの中にいた。
先程までの艶かしい表情とは一変して、眠る姿はまだあどけなさが残っている。
夢中でなまえを抱いていた時には細部に気付くことが出来ずにいたが、身も心も落ち着いた中にあると、なまえの色々な部分が良く見えてきた。

眠る姿がまだ幼いことも、閉じた瞼を縁る睫毛が思った以上に長いことも、肌のきめ細かさも、柔らかな髪の感覚も…。
そんな幼げな姿のどこに、あんな大人びた淫らな姿を隠していたのか。


「怖いもんだぜ、女ってなぁ……」


己の口元に優しげな笑みが浮かんでいることも知らぬまま、氏康の指先は絶えずなまえの髪を撫で続ける。
小さな手も、柔らかな肌も、ふっくらとした唇も、なまえの全てが氏康には愛おしい。
目に映る全て、指に触れる全てが堪らなく愛らしい。こんな感情は、氏康も初めてだった。


「夜が明けんのがもったいないな、こりゃぁ…」


初めて感じる感情に戸惑いながら、氏康は規則的な呼吸を繰り返すなまえを優しく胸に抱き寄せる。
こいつが起きるまでずっと見ていたら、起きたときにどんな反応をするだろうか。
そんな柄にもないことがふと頭を過ぎり、思わず氏康は苦笑を漏らした。

お前のせいで、俺はうつけから腑抜けじゃねぇか。
愛しい思いを悪態に変えて、氏康は抱き寄せた胸の中のぬくもりにそっと触れるだけの口付けを落としたのだった。




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