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氏康から感じられるものは、父性愛でしかないと思っていた。
大きく離れた年齢もそうだが、氏康にとってなまえは異性の対象にはなり得ないと思っていたのだ。
氏康の瞳を通して自分を見たら、一体どのように映って居るだろうかなどと、叶いもしない事ばかりを考えたこともあったが、今この瞬間は、彼の瞳越しに自分を見る事が出来なくて良かったとなまえは心の底から思った。

氏康に組み敷かれ、はだけた夜着。
彼の厚い胸板が、なまえの見上げる目の前に広がっている。


「氏康様…」
「…そんな目で見るな」


困ったような照れ笑いを浮かべた氏康は、左手でなまえの右手を取ると、その掌を己の心臓へと押し当てた。
激しく脈打つ氏康の心拍が、直になまえの掌に伝わる。


「俺が緊張してるのが判るか?」
「でも…何故?」
「お前も知っての通り俺はうつけ者だからな…。幻想でも、夢の中ですらも、お前をこの腕に抱けなかった男だ。
だから、こうしてなまえが俺の腕の中に居るってのがまだ信じられねぇのよ」


なまえの右手をそっと離すと、氏康はその手でなまえの頬を撫でる。
ゆっくりと唇を塞ぎながら、なまえの口内に氏康の舌先が侵入してきた。
絡み合った舌先からは、ほんのりと煙草の苦い味がした。


「…んっ、氏康……様」
「なまえ…」


低く囁くような氏康の声が、なまえの頭を蕩けさせて行く。
氏康の唇がなまえの首筋を下り、胸の突起を舌先で転がすだけで、なまえの中心に熱が集まって行った。


「っあ…氏、っ」
「悪い、抑えられん……」


なまえの入口に氏康の中指が捩じ込まれる。
しつこいほどに胸の突起を甘噛みしながら、氏康に指はヒクヒクと痙攣を続けるなまえの中を掻き回す。
その度になまえの中からは熱を帯びた愛液が溢れ出て、氏康の手だけではなく夜具までをも濡らして行く。


「やっ…もう……」
「もうイっちまうのか…?だったら、俺のでイけよ…」


なまえの愛液に濡れそぼった指を引き抜くと、氏康は彼女の目の前でその指を舐めて見せた。
その仕草がやけに官能的で、なまえは恥ずかしそうに目を伏せる。


「ずっと…お前をこうして抱きてぇと思ってた」
「ああ…っ、熱っ、」
「…っ」


氏康が小さく呻くと同時に、なまえの小さな身体の中が氏康で満たされる。
なまえの濡れそぼった入口が氏康の雄をきつく締め付け、彼が緩々と抜き差しを繰り返す度に甘い悲鳴にも似た声が上がった。


「っ…んなに締めんな、力抜け…」
「ふ…っ、んん……」


激しく奥を付け上げながら、氏康はなまえの唇を塞ぎ舌を絡ませる。
口付けの合間に吐息と共になまえの喘ぎ声が零れ、その甘い声が一層氏康の欲を高揚させた。
氏康のピストンが激しさを増すと、なまえの頬には堪らず涙が伝い落ちる。


「ひぁ……やっ…いっ、ん」
「っは…たまんねぇな、なまえ…もうイくのか?」
「氏康…様っ、も‥熱っ…」


なまえの両膝の後ろに腕をかけると、氏康はそのままなまえの脚を開かせながら奥へと侵入して行く。
繋がり合う互いの秘所から溢れ出る愛液を眺めながら、氏康の雄をきつく締め付けるなまえの肉壁を壊さんばかりに、氏康は粘質な音を立てる其処を突き上げた。


「ああぁ…っ、っんぁあ……」
「くっ…なまえ……っ」


激しく腰を打ち付けると、氏康はなまえの中に全ての熱を放った。
ぐったりと、汗の滲んだ身体を動かす事も出来ないなまえの胸の上に、ぽたりと氏康の額から汗がこぼれ落ちる。
まだ呼吸の整わないなまえと繋がり合ったまま、氏康はなまえを優しく包み込むと愛おしそうに口付けを落とした。


「俺は根っからのうつけ者だな…」
「……え?」
「お前を抱くのに、こんなにも時間がかかっちまった」


そう言って笑った氏康に、なまえも思わず笑顔を見せる。
何度も何度も唇を重ね合っては、互いの存在を確かめ合った。

夜はまだ、始まったばかり…。




No Control
(幻想のお前さえ抱き締められない俺が)

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