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いつもと同じ笑顔を浮かべながらなまえに迫る秋山は、いつもとは違う雰囲気を漂わせていた。
なまえにはそれが何を意味するものなのかがまったく理解できず、ただただ戸惑うばかりである。
じりじりと距離を詰める秋山に困惑していると、突然伸びてきた秋山の右手がぐっとなまえの顎を掬い上げた。


「ね、俺って嫉妬しない男だと思ってた?」
「秋…」
「俺ねぇ、情けない事に…意外と嫉妬深いんだよねー」


なまえちゃん、知らなかったでしょ?
にっこりとなまえに微笑みかけると、秋山はなまえの顎を持ち上げたままでゆっくりとその唇を塞いだ。
触れるだけでは飽き足らず、秋山はなまえの咥内に舌先を差し込んでぐちぐちと中を掻き回す。
我慢しきれずになまえが甘い声を漏らすと、すかさず秋山の行為は激しさを増してゆく。
何とか秋山から逃れようともがくものの、なまえの顎に触れる秋山の指先は決してそれを許してはくれない。
しつこいまでの口付けになまえが息を上げていると、やっとの事で秋山の唇がなまえを解放した。


「なまえちゃんが潔白なのはもちろん判ってるけど、デートまがいなことはして欲しくないんだよね」
「なん…、」
「しらばっくれちゃって…。昨日城戸ちゃんと二人でクラブセガでUFOキャッチャー楽しんでたじゃない」
「嗚呼、それは」
「どんな言い訳も聞かないよ。正当な理由があったとしても、俺が嫌なものは嫌なの」


だから反省してね?
再びニコッとなまえに微笑みかけると、秋山はなまえの唇に視線を落としながらゆっくりと距離を詰める。
秋山の視線が唇を捉えているというたったそれだけのことにすらも、なまえの心臓は速さを増して脈打ち続けていた。
再び唇を塞がれるのだろうか…と緊張感に包まれながらなまえがぎゅっと瞳を閉ざして身体を強張らせていると、身構えるなまえを余所に対峙した秋山からはくすくすと笑い声が零れた。


「ねぇ…そういう可愛い反応は反則だよ、なまえちゃん」
「っ、秋山さ…」
「ま、こんな甘いお仕置きじゃ効き目がないのは判ってるんだけどね」
「あの…」
「でも、嫉妬深くて独占欲も強いなんて…そんなダサいとこ、あんまり好きなコには見せたくないから仕方ないか」


なまえちゃんには、どうあっても甘くしちゃうんだよねー。
自ら発した言葉に満足そうに笑みを浮かべると、秋山の右手が優しくなまえの髪を滑り降りる。
掬い上げた柔らかな艶髪にふわりとキスを落とすと、微かに頬を染めて固まるなまえを秋山の両腕が包み込むように抱き寄せた。


「なまえちゃんは、やきもち妬きな男は嫌い?」
「そんなこと…っ」
「ホントに?じゃあ…好きって言ってよ、俺に」
「っ、も…」


耳元で囁く低音から逃れようと身を捩るも、秋山の腕は簡単にはなまえを解放しようとはしなかった。
顔を見て言うのが恥かしいなら、俺の耳元で言って?
甘えたようになまえの鼓膜を擽る秋山の声に、なまえの身体はぴくりと小さく跳ね上がった。
秋山の温もりも、口付けも、囁く声ですらも、面白いほどになまえの鼓動を昂ぶらせてゆくのだ。


「俺の声だけで感じちゃった…?」
「や…っ違、」
「なまえ可愛い…。ね、好きって言ってくれたら…もっとご褒美あげちゃうよ?」


だから…ね、言って?
耳朶を甘噛みしながら囁きかける秋山の誘惑に負けて、なまえの両腕がきゅう、と秋山のスーツのジャケットに皺を刻む。
羞恥心で張り裂けそうな心臓をなんとかなだめてほんの少しだけ背伸びをすると、なまえの唇が秋山の耳元まで一気に距離を詰めた。
ありったけの勇気を振り絞って、消え入りそうなほど小さな声で「秋山さんが好きです」と告げると、途端になまえの身体は苦しいほど強く秋山に抱きしめられた。


「なまえ…愛してる」


これ以上ないほどの真剣な声音で告げられた言葉は、甘い口づけと共になまえの中へと溶けていった。



Love Desire
(キミの愛で狂わせて)

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