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人ごみを掻き分けて進むウルフウッドの背を追いかけながら、なまえは堪りかねて目の前をはためくウルフウッドのジャケットの裾を掴んだ。
すいすいと進むウルフウッドとは対照的に、なまえは行き交う人たちと接触しそうになってばかりだった。
このままではいずれ迷子になりかねない、と自衛の意味を込めて掴んだジャケットの端っこは、振り返ったウルフウッドの手によってぴしゃりと撥ね付けられた。


「コラ、んなとこ掴んだら皺になるやろ」
「ごめんなさい…でも、ニコ兄に置いていかれちゃいそうで…」


立ち止まり、ジャケットの端を離した手に視線を落としながら告げるなまえに、ウルフウッドの口からはこれ見よがしな溜息が漏れる。
どうしてこうも足手まといになってしまうのだろうかと、なまえの視線は下へ下へと落ちてゆく一方だった。


「ったく…ホレ」
「…?」
「手ェや手ェ!早よう出さんかい」


言われるがままに差し出した右手が、ウルフウッドの左手に包まれる。
肩に担いだパニッシャーの重みを微塵も感じさせず、行くでと告げたウルフウッドになまえは手を引かれた。


「こうしとったらいくら鈍チンななまえでもはぐれへんやろ」
「ありがとう、ニコ兄」
「アホか…ワイに気ィ遣ってどないすんねん」


ニッと笑顔を見せるウルフウッドに、つられてなまえの顔にも笑顔が浮かぶ。
無為に繋がれていた手がウルフウッドが主導でするりと指を絡ませあうように繋がれ、それだけでなまえは幸福感に包まれた。


「オドレはそうやって、笑っとる方が似合うてるで」


ぎゅうっと繋がれた手と、ぽつりと呟かれた言葉がまるで魔法のようになまえの気持ちを満たしてゆく。
抱きついてしまいたくなる衝動を押さえ込むと、なまえはぴったりとウルフウッドに寄り添いながら人ごみの中を通り抜けるのだった。



Hand in Hand
(てとてをつないで)



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