「怖いか?怖いんやったら止めても…」
「嫌…止めないで、ニコ兄…」
胸元にぎゅうっと縋りつくなまえに、ウルフウッドの口からは熱い溜息が漏れる。
さらさらと指の間をすり抜ける柔らかな髪の感触が心地よい。
緊張して硬くなった身体で、それでも縋るなまえの指先がウルフウッドのシャツに皺を刻む。
ゆっくりとその指先を解いてそこに口付けを落とすと、微かになまえの身体がひくりと震えた。
「判ったわ…止めへんから、もうちいと力抜かんかい」
「あ…ごめん、なさい」
「アホ、謝んなや」
ワイも緊張してんのは確かやし、オドレのこと言えへんねん。
少し照れくさそうに告げられた言葉に、思わずなまえはウルフウッドの顔を伺う。
同じように緊張してくれているのかと思うと、それだけでなまえの胸はいっぱいになった。
優しく、けれど力強く抱きしめられると、なまえの耳元にウルフウッドの吐息が掛かる。
しかし…えらい綺麗になったもんやで。
ひとり言のように呟かれた言葉に、なまえの顔は火照ってゆく。
「なまえ」
「はい…っ」
「…我慢はすんなよ」
「は…い、」
なまえをベッドの上で組み敷くと、ウルフウッドの唇がそっとなまえの唇に触れる。
それだけでなまえは全身が心臓になってしまったのではないかと錯覚するほど、激しい鼓動の音だけに支配された。
堪らずなまえが大きな背中に手を回すと、両足を割りながら身体を密着させるウルフウッドに咥内をかき乱される。
「なまえ…」
「っ…はい、」
「ワイのこと…一生忘れんといてくれ」
仮令どんな姿になったとしても。なまえより先に死を迎える事になったとしても。
言いかけた言葉を飲み込んで再度口づけると、なまえの頬にはひと雫の涙が伝った。
触れた唇を離さぬまま、ウルフウッドの指先はなまえの服を乱していくのだった。
君の記憶から消えていくのが怖いから(その身体に全てを刻み付けたい)