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「あの…」
「ん、なんだい?」
「…いえ、やっぱりなんでもないです」


慶次の腕を枕に、ごろりと畳の上に横たわる。
吐息が掛かるほど近くにある慶次の笑顔に、なまえは否が応にも鼓動が早まった。
いっぱいに広がる青空も気に留めず、最近の慶次は何かと自室に閉じこもってはごろごろと大きな身体を横たえてばかりである。
なまえとしては、朝昼晩とお茶を理由に慶次に逢えるので役得だという程度だったのだが、こうも毎日自室に籠もりっぱなしというのは珍しさを通り越して心配にすらなってしまう。
現に今は、手招かれるままに慶次の隣に横たわっているのだから尚更だ。
なんでもないと答えたは良いが、慶次らしからぬここ最近の様子に、気になってまじまじと見つめた瞳が慶次から離れない。


「そんなにじっと見られちゃあ、さすがに照れちまうね」
「あ…ごめんなさい、不躾に…」
「いいや、あんたの視線を独り占めできるんなら、俺も男冥利に尽きるってもんさ」


衣擦れの音とともに、なまえの身体は枕になっている腕とは反対の腕で慶次に抱き寄せられた。
あまりにも優しく、あまりにも自然に、そしてあまりにも愛おしそうな手つきで触れる慶次に、心臓が締め付けられる。
大きな手が不似合いな程に繊細になまえの頭を撫でるので、途端になまえの視線に熱が混じった。


「堪んないねぇ」
「えっ…」
「そんな目で見られちゃ、あんたが欲しくなっちまう」


ぐっと詰められた距離に驚く暇もなく、慶次の鼻先がなまえの鼻先と触れ合った。
抱きしめられながら触れられた唇の感覚に、一瞬で脳内が蕩けてしまいそうになる。


「最近、外に出るのがもったいなくてね」
「慶次…様、」
「あんたと居られる時間の方が、俺には大事に思えてきちまったんだ」


毎日だってなまえとこうして居たいくらいさ、と。
柔らかな笑顔で囁く慶次に、なまえの手が勝手に慶次に縋ってしまう。
求められる幸福でどうにかなってしまいそうなまま、なまえは再び慶次の口づけを受け止めた。


誰よりも愛しい
(甘えんぼシリーズVol.5)


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