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ウイスキーの入ったグラスを傾ける桐生の横顔に、なまえの視線が刺さる。
手を止めてなまえの視線を受け止めてみれば、頬杖をついたままのなまえは相変わらずじっと桐生の方に向けられていた。


「なんだ、なまえ」
「桐生さん…酔ったりしないんですか?」


こんなにたくさん飲んでるのに。
もう数える事も忘れた何杯目かのグラスに視線を落とすと、なまえがぽつりと囁いた。
ぽん、となまえの頭を撫でた後でグラスに残った液体を飲み干すと、桐生は身体ごとなまえに向き直った。


「俺だって酔うことはあるさ」
「じゃあ、桐生さんは酔うとどうなるんですか?」
「…そうだな」


少し考える素振りを見せたかと思うと、桐生は不意になまえの顎を指で掬った。
あまりに突然の事で状況を理解できないなまえを余所に、桐生の唇はなまえの唇をゆったりと塞ぐ。
触れるだけではとどまらず、唇を割って侵入してきた舌先が、なまえの咥内で絡まりあった。
身体が熱くなっていくのは仄かに残るウイスキーのせいなのか、それとも桐生の口付けのせいなのか。
意識が溶けてしまいそうな感覚に眩んでいると、ようやくなまえの唇は解放された。


「も…桐生さん、」
「なまえが聞いたんだろ、酔うとどうなるのかって」


桐生の口の端に浮かぶ笑みに、なまえは言い返すために用意していた言葉を失った。
こんな風にからかうんだから、と少しだけ拗ねたくもなる。
わざと桐生の視線を逃れるように背を向けて反抗の意を示してみれば、なまえの身体は桐生の二本の腕に簡単に包まれた。


「お前と居る時、俺がどうして酔わない程度で止めてるか判るか?」
「…どうしてですか?」


ぎゅっと抱きしめられた腕の中、なまえの耳に寄せられた唇がゆっくりと動き出す。
お前を俺の欲だけで抱いちまわないように、だよ。
低く響く声に、なまえの中にぞくりと熱が集まりだす。
桐生さんなら構わないのに、とポツリと呟いた声は、それでも確実に桐生の耳へと届いていた。



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