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「なまえ…」
「官…ッ」


書棚にたくさんの書物を片付けているなまえの身体が、官兵衛の両腕に抱きすくめられた。
言葉が途切れたのは、露になった項に口づけが落とされたから。
びくりと身体を震わせている隙にも、官兵衛の口づけは二度三度と降り注ぐ。


「官兵衛様…っ、人が…来てしまいます」
「…構わぬ」
「ん…っ」


身体を捩って官兵衛の腕の中から逃れようとするも、なまえを抱きすくめる両腕はびくともしない。
誰がくるとも判らぬ場所で、このような行為をするような人ではないはずなのに。
突然の出来事に混乱するなまえなどお構いなしの官兵衛に、それでもなまえの身体は素直に反応を示してしまう。


「出来ることなら全ての者に見せ付けてやりたい」
「っ、あ…」
「卿は、私のものだと…」


耳を舐られながら囁かれる言葉に返事をする余裕もなく、なまえは必死に蜜声を押し殺す。
崩れ落ちてしまいそうな身体を支えようと書棚にしがみついてみれば、官兵衛の大きな掌がなまえの手の上に重なった。
手の甲をすっと撫でられただけで、全身が痺れてしまう。


「なまえ…」
「っ、はい」
「…済まぬ。戯れが過ぎたようだ」


ぎゅう、と優しくなまえを抱きしめると、官兵衛はくるりとなまえの身体を反転させた。
なまえが官兵衛と目を合わせるよりも早く官兵衛が真正面からなまえを抱きしめると、ちょうど心臓の位置になまえの耳が押し付けられる。
私は誰のものでもなく、ただ官兵衛様だけのものです、と。
穏やかに刻まれる鼓動の音に心を奪われながら静かに囁くと、なまえを抱きしめる二つの腕に力が増した。
覗き込むように官兵衛へと視線を向ければ、なまえの唇は官兵衛のそれと優しく重なり合うのだった。


誰よりも愛しい
(甘えんぼシリーズVol.1)


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