sleep | ナノ

騎場くん、なんだか遠い人になっちゃったなぁ。
少しだけ寂しそうに、それでも笑顔で告げるなまえに、拓馬の口からは「は?」と怒りにも似た感情が溢れ出た。


「なんでそうなんねん」
「だって…今や有名人だから、騎場くん」


己の視線を逃れるようにくるりと向けられた背中を睨みつけるも、なまえの気持ちの奥までは覗けない。
突然何を言い出すのやら。突然何故そうなるのやら。
なまえの言うことが理解できず、そして納得も出来ず。小さな背中を見つめてみても、やはり拓馬にはなまえの気持ちは判らない。


「騎場くんがサッカーで活躍すると嬉しいのに、ちょっと寂しくなるの…」
「…なまえ、」
「なんかね、もう自分だけが知ってる騎場くんじゃないんだな、って」


元々、自分だけが知ってるわけじゃないんだけど…。
少し震えた声が告げるなまえの気持ちに、拓馬はふぅと溜息を漏らした。
随分と愛されたものだと、勝手に口元が緩んでしまう。


「お前はアホやな、まったく」


手を伸ばせば直ぐに触れることが出来る。
そんな距離に居るなまえを背後から包み込むように抱きしめてやると、拓馬は己の顎をこつりとなまえの頭頂部へと乗せた。


「お前はホンマ、やきもち妬きすぎや」
「…ごめんなさい」
「俺がそんな浮ついた男に見えるっちゅうなら、怒るでホンマに」


緩んだ頬で言うには説得力の欠ける言葉でも、なまえは再びごめんなさいと嬉しそうに囁いて拓馬の腕にぎゅっと縋る。
代表になったから言うて、俺は何も変わらんわ、と。
愛しい人の耳元で、拓馬は優しく囁いてやるのだった。



可愛い人
(僕を いつも 励ましておくれ)

▼騎場拓馬(FW)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -