sleep | ナノ

もうすぐ陽も一番高いところまで昇ろうかというところなのに、なまえがそこへ足を踏み入れると、未だに敷かれたままの布団が嫌でも目に入った。
ぐちゃぐちゃと乱れた掛け布団を足元に押しのけた状態で、この時間にも拘わらず寝巻き姿で布団の上に転がる左近が目に入らない方がどうかしている。
あの、とその後姿に声を掛けてみれば、案の定左近はなまえへと振り返って満面の笑みを零す。


「具合が悪い…わけではないのですよね?」
「ええ、まあね。気分が乗らないだけですよ」
「そうですか。…とりあえず安心しました」


普段真面目な左近のこんなにもだらしない姿というのは、なまえにとっては新鮮そのものである。
それでも、気分が乗らないというだけでこんなにも自堕落な姿を平気で晒すものなんだろうか、という疑問はなまえの中で残った。
一体今日はどうしたのだろうか。頭でそのわけを考えてみるものの、正しいであろう答えは微塵も思い浮かばず。
声を掛けようにも困り果てたままでじっと左近を見つめていると、寝転がったままの左近に手招きされた。


「なまえ、こっちに」
「はい…」


ずい、と膝立ちでにじり寄ってみると、左近の大きな手に掴まれてなまえの身体は布団の上へと転がった。
驚く間もなく身体がぎゅうっと左近に抱きしめられ、なまえの顔は逞しく鍛え上げられた左近の胸元へと押し付けられていた。


「っ、も…左近様…」
「たまには、甘やかしてくれませんか?」


なまえをすっかり布団の上に押し倒してしまうと、左近の右膝がなまえの両足の間を割ってするりと潜り込む。
慌てて両足を閉じようにも、内腿の際どい場所に左近の膝が押し当てられ、抵抗しようにも半端な状態へと成り下がる。


「左近、様…も、からかわないで…」
「酷いですね、俺はいつだって本気ですよ」
「っ、でも…」
「まだこんなに明るいのに、そう言いたいんですか?」


意地悪く微笑む左近の視線を逃れるように顔を背けると、その視線を追いかけるように左近の顔が再び目の前に現れる。
なまえの名を呼ぶ左近の表情が先ほどとは一変して、官能的で物欲しそうなものに変わっていた。
俺だけを見ててくれませんか。
唇がそう告げる動きを見つめながら身動きひとつ取れないなまえに、左近の唇が重ねられた。


「今のところは…これで我慢しますかね」


鼻先をつん、とくっつけながら優しく囁く左近の声に、なまえは思わず腕を伸ばして左近を抱きしめた。
努めて明るく囁かれたその声とは裏腹の、なまえを欲して止まない左近の表情がなまえの胸を苦しくさせたのだ。
駄々っ子みたい。
左近を抱きしめながら、ぽつりと呟いたなまえの口元にはふわりと優しげな笑顔が浮かび、大きな子供のような左近へとなまえも口付けを送るのだった。



speak like a child
(子供のように甘えさせて)


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