すうぃーとすうぃーと | ナノ
くまさん


大好きなものをぎゅうううううっと抱きしめて
それをすぐにぽいっと放り投げたい気分。

いらいら。もやもや。けど誰かに構って欲しくて。
そんな複雑な気分の時が、女の子には月一である。
いや、もちろん個人差はあるけど、私の場合はそう。
大好きなものを、大好きなの大切なの、と強く抱きしめて、
すぐにやっぱりあぁもうっ!と叫んで放り投げたい気分。
そう、面倒臭い。

だから本当に大好きなもので、
そんなことをするわけにはいかない。
こんな憂鬱で刺々しい日の私のお友達は
くまさんのぬいぐるみ。
ソファーに横になったまま、
ぎゅっと抱きしめてぽいっと放り投げる。

お腹と腰が痛くて、ついでに頭痛もして、気分も悪くて、
ううう、あああ、と何度も唸った。
足元に纏わりついてたブランケットを
ぐいっと胸元が隠れるまで引っ張り上げる。
少し眠れたら楽になるんだけどなあー。
そんなことを思いながら、くまさんを拾い上げ
再びぎゅっと抱きしめる。あぁ。
駄目だやっぱり刺々しい。
私が放り投げようと手を振りかざすと、
それを制止しに来たのは
くまさん何かよりずっと構って欲しかった、
本当に大好きな人だった。


「…何よ。」


本当は構ってもらいたかったはずなのに、
いらいらしてつれない態度をとってしまう。
この人がくまさんだったら、今は放り投げたいところだ。


「…さっきからずっとそうして。可哀想ですよ。」


エルは私の手から
今まさに床に投げ付けられようとしていたくまさんを救出し
歪んだ顔の形を整えて埃を払った。


「構って欲しいなら、くまに乱暴したり唸ったりせずに、
素直な態度を取ればいいのに。」


エルはそういうけど、いらいらもやもやしている
月に一度の私には無理な話で。


「うるさいなぁ。体調悪いのよ、あっち行ってて。」


この人がくまさんなら
今ちょうど床に叩き付けられたところ。
大好きなのに、構ってもらいたいのに、放っておいて欲しい。
今の私はとっても複雑でめんどくさい。
どうか向こうに行って欲しい。
これ以上大好きなエルに当たってしまって、
素直になれないわたしを嫌いになって欲しくない。
そんな思いでブランケットの中に顔まで埋める。


「真幸。」


そんなことはお構いなしに、
彼は私の丸まった体を
ブランケットごと包み込むように抱き締めた。
頭上に息が掛かってくすぐったい。
何だか嬉しくて、思わずふふっと笑い声のような息が漏れた。


「素直じゃないのか本当は楽しいのかどっちなんですか。」


「もううるさいってば!しんどいって言ってるじゃん!」


思わず怒鳴ってしまうと
エルは悲しそうにそうですか、と呟いて
私を開放してしまう。
あぁ欲しかったはずの温もりが離れてく。
待ってよ。
本当は大好きなの。抱き締めたくて堪らないの。
構ってもらいたいの。


「…待ってよ。」


白いシャツの裾をぐいっと引っ張る。


「…あっちへ行けと言ったのは真幸でしょう…
どっちなんですか。」


「ごめんなさい。嘘。
ちょっとしんどくてイライラしてたの。
面倒臭いかもしれないけど、察して。」


エルはふぅ、と小さくため息を吐く。
そしてまた私を抱き締めた。
ブランケットから顔を出した私をじっと見つめる。
素直になれなくて散々言っちゃったのに
また抱きしめられてることを思うと何だか気恥ずかしい。


「…言っときますが、
私は黙って投げられたりハグされたりしている
くまのぬいぐるみほど優しくはありませんよ。」


「うん…ごめんなさい。」


「…まぁ、生理中くらいは甘やかしてあげます。」


あらら、ばれてた。
まぁあれだけよくわからない機嫌だったんだもん、
当たり前か。


「今日は私があなたのくまさんです。」
なんてふざけたことを真面目な顔で言うから
思わず声を出して笑ってしまう。
彼をぎゅっと抱き枕にして、暫く眠ることを決めた。
エルがソファーの端にちょこんと座らせたくまさんが
2人の様子を見守っていた。























20130319*



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