すうぃーとすうぃーと | ナノ
午後


名探偵のバックアップ役を務めるワタリは
いつものように支度を済ませ、
名探偵Lの居る仕事場へと向かった。

確か昨夜から真幸さんが来ていたはずだ。
とっておきのアールグレイを準備していかねば。

ワタリはLの恋人である真幸を
とても特別に思っていた。

幼い頃から見守ってきたLの大切な恋人であり、
そのLに他人を想いやる気持ちや幸せを
与えてくれた女性だからだ。

Lには、親がいなかった。
施設での生活を1人ぼっちで過ごすLは
そんなものとは無縁だった。
ずっとそうだろうと思っていた。

Lは全く他人と関わろうとしなかったからだ。
卓越した頭脳を持つLにとって
浅はかな他人との関わりは
何もかもが自分の想像の範疇でしか事の起こらない、
とてもつまらないものだったに違いない。

しかし、もちろん人間は
絶対的かつ規則的で正しい行動ばかりをとるわけではない。
時に感情的になる人間は、人間としての過ちを犯す。
殺人、強盗、テロ。
それらの犯罪、難事件は卓越した頭脳を持つLの
お気に入りの暇潰しとなった。
その時だけは楽しそうで、彼も人間的だった。
それが唯一、Lと他人の関わり合いだった。

しかし人間はそれだけではなかった。
予想内でしか動かない人間の予想外の行動、
つまり犯罪や難事件を暇潰しに当てていたLにとって、
もうひとつ。人間は予想外の行動をとることを知った。

それは、人間が他人のために動くことだ。
Lは、真幸と出会って初めてそれを知った。
犯罪や難事件は自分の為に起こすのに対し、
「愛」は他人の為の感情だった。

ワタリはずっと、ずっとずっと、
Lはそんなものとは無縁だろうと思っていた。
何故なら彼が他人と関わるのは
犯罪や難事件の起こった時だけ。
人間の汚く愚かな部分が明らかになる時だけだ。
しかしそんな最中で出会った真幸は
綺麗で真っ白で、世の汚れを知らない女性だった。

最初はLも戸惑ったに違いない。
しかしいつしかその屈託のない笑顔を、
汚れないよう守りたいと思うようになったのだ。
Lの親代わりをして来たワタリにとって
Lがそんな感情を得たことは
とてもとても喜ばしい、嬉しいことだった。


紅茶の準備を済ませ、愛用の懐中時計を見やる。
午後3時。アフタヌーンティーに丁度良い時間だ。

2人はどんな話をしているだろうか。
久々の休日で幸せな時間を過ごしているに違いない。
邪魔にはならぬよう、そっと扉を開けた。


「L、真幸さん。
紅茶をお持ちしましたよ。」


飛び込んで来た光景に、
ワタリは思わず「おや、」と声を漏らす。

ソファーに身を預け
気持ち良さそうにお昼寝中のLと真幸がいた。


ーおやおや、これはいけませんな。


どうやら
とっておきの紅茶の出番はなくなってしまったようだ

改めて2人の姿を眺め
先程紅茶を淹れながら考えていたことを思い出す。

世の汚れをおもちゃにして生きてきたLと
そんなもの全く知らずに生きていた真幸。
その2人がこうして出会い
労り合い、愛し合って生きている。

気持ち良さそうに小さく唸ったLが寝返りをうち
更に深く真幸を抱き締めて落ち着いた。
真幸は少し苦しそうにしたが
抱き締められていることに気づき
Lのその腕をぎゅっと拘束して
また深い眠りに落ちてしまった。

こんなに安らいだ表情が出来るようになったんですね、L。

無意識に求め合う2人。
ワタリは微笑ましく、幸せな気持ちになった。
Lが真幸さんに出会えて良かったと、心からそう思う。





「 Please have sweetest dreams. 」





幸せそうに笑ったワタリは2人にブランケットを掛け
無駄になってしまった紅茶の片付けを始めた。
















20130217
2人の幸せを見守る父親ポジションのワタリさんが好きだ!



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