すうぃーとすうぃーと | ナノ
世界と彼女と幸せの在り処


ずっと独りで居たはずなのに
気づけば独りでは居られなくなっていた。

ずっと独りで生きていくのだと思っていた。
自分の時間が終わるまで、ずっと、独りで。


そんなことを1人で考えているといつも
どうしたのエル、と
優しい心を痛めてくれている彼女のおかげで
私はもう独りではないと
気づいたのはいつだっただろうか。

もう少しで、その彼女の家が見える。
そこでこれから2週間程過ごすのだ。
彼女には申し訳ないことに仕事からは離れられないので、
仕事場のデータを諸々持ち出したPCも一緒に、だが。


いつもの曲がり角を曲がると、
信じられない光景を目にした。

…重たそうな買い物袋を下げた、彼女だ。


「…何してるんですか。」


「あっ、エル!おかえりなさい!」


「…おかえりなさいじゃないです。
私の手が離せないときも
ワタリを自由にして良いと言っているでしょう。」


「だってワタリさんに悪いし…エルが来てくれるんだから
急いでご馳走つくらなきゃって思ってさ!
あっ、大丈夫だよ!
先生にも動いた方がいいって言われてるし!」


彼女はえへへ、と
いつもの屈託のない真っ白な笑顔で笑いながら
買い物袋を下げていない左手で
自分の大きく膨らんだお腹を大切そうに撫でた。


「えへへじゃないですよ、まったく…」


「あっ、呆れてる!」


「えぇ呆れてますよ?」


ふーんだっと唇を尖らせる彼女。
これはいじけて見せる時の私のクセだ。

全く、呆れてしまう。
貴女はどこまで私を幸せな気持ちにすれば気が済むんですか



「…貸してください。」


「えっ、いいよ?もう家見えてるし!」


「…持ちます。から、手を繋ぎましょう。」



買い物袋を持ち替えて、
空になった右手を奪い去った。


「…ありがとう、エル。」



心底嬉しそうに、彼女が笑う。
お腹に添えた左手では薬指が光る。


独りでも、生きていけないことはない。
けど真幸のいない人生には
何の意味も輝きもない。

真幸が居たから、
今生きていられるのだとさえ思う。
そしてそう思ってしまう自分を、心底馬鹿だとも思う。

しかしそう思うほど、
そんなことあるはずがないのはわかりきっているのに、
そう信じさせられてしまう。

それ程の存在を、真幸を得た私は、
もう絶対に独りではない。
そして。


彼女の左手の輝きの上に
私の左手に在るお揃いの輝きを添えた。


「貴女も私も、もう独りではありません。」





愛しています。



そう伝えた先には
もう独りではない私と真幸と、
その2人の間に宿った命の姿が見えていた。




































20130205
やっぱり幸せなエルを書くのが好きです





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