すうぃーとすうぃーと | ナノ
分け合う


深夜、ベッドの中で寝苦しさに眉を顰め
体をモゾモゾ動かせば
頭からすっと何かが離れていくのを感じた。


「…エル?」


彼がここにいるのは珍しい。
彼は寝る時間も持たない忙しい探偵だ。
眠る恋人を放置して仕事してるような人なのに。

けど今日は違うらしい。
同じベッドの中にいるところを見ると
いつもの行為の後もベッドに留まり
今まで睡眠をとっていたようだ。
うっすらしか開いていない瞳がそう語っている。

「…髪撫でてくれてたの?」


「…起こしてすみません。」


そんなの、いいのに。
私はエルがちゃんと睡眠をとっていたことが嬉しかった。
けど、なのに、それなのに、
一体どうしてしまったというんだろう。
私の瞳に映るエルは心なしか寂しそうだった。
猫背の彼がいつもより小さく見えた。
私の髪を撫でてくれてた大好きな手も
今日は力なく頼りなさげだ。


「…どうしたのエル。」


「いえ…少し、悪い夢を見ました。」


嗚呼。そうか。

突然子供のようなことを言い出す彼を
可愛いとは思うけど笑おうとは思わない。
彼は強い人だけど、とっても優しい人だから。
強くて脆い人だから。
きっとそんな日もあるんだわ。


「それは…どんな夢?」


「世界で1人になる夢です」


馬鹿…なんて夢見るのよ。
私がいるんだからそんなことさせないのに。


「…変ですね。」


彼の口から不意に零れたその言葉は
繋がる先を見せなかった。
それっきり、エルは黙ってしまった


「…エル。エル、どうしたの。」


すっかり意識も覚醒し、
ベッドの上でいつもの座り方に落ち着いた彼と
目を合わせるために膝を立てて座った。

そのまま彼がしてくれてたみたいに
彼の髪を両手でそっと撫でる。
クセのつきやすい大好きな硬い髪は
私の指が段々下に下がるにつれて解かされていく。

未練がましかった髪の先が指先から滑り落ちた時
黙って髪を撫でられていた彼が初めて動いた。
私の腰にぎゅっと抱きつく彼はまるで子供みたいで。

こんな抱きしめられ方初めてした私は
正直戸惑ってしまった。
こんな抱きしめられ方、いや
こんなに弱ってるエルは初めてだ。

こんな時は抱きしめ返して良いものなのだろうか。
宙に彷徨った両腕は
再び彼の髪を撫で出すことしか出来なかった。



「エル…本当にどうしちゃったの…?」


「…変なんです。
今までずっと1人で居たはずなのに、
今では1人がすごく…怖いんです。」


怖い。それが、やっと聞けた彼の本音。
いつもの真顔で抑揚のない言葉、
それこそ他人事みたいに彼は呟く。


「変なんです、どうかしてます。」


「変じゃ、ないよ。
だって、エルはもう1人じゃないんだもん。」


「真幸…」


「1人じゃ、ないよ。」



あぁそうだ、最初からこうすればよかった。
私はやっとエルの背中に手を回して抱きしめられた。
ぎゅっと胸と胸を合わせれば2人分の心臓が響く。
もう1人じゃないよ。私も、エルも。


「…やっぱり変です。
1人じゃなくなると、1人が怖くなるんですね。」


「超天才の名探偵でも、わからないことがあったのね。」


「…はい。でも、今わかりました。」




2人でいるから、もう寂しくないです。







そうして重ねた唇が、同じ温度に変わった。













































20130204
弱った彼が書きたくなって書きました。
「分け合う」のは温度です。2人でしか出来ないことです。

シチュは好きなのに
勢いで書き出したらわけわかめになったんで
絶対いつか書き直します\(^o^)/






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