すうぃーとすうぃーと | ナノ
神様


「人は生きてる限り
誰かに迷惑をかけ続ける生き物なのよ」と
誰かが言っていたのを思い出した。
確かその話は、
他人に迷惑をかけるのはしょうがないことだから
貴方も人の迷惑を許してあげられる人間になりなさい、
と言った趣旨のものだった。

けど今の私には違う意味に聞こえる。
だって人の迷惑を許したところで
自分の迷惑が許されるわけじゃないもの。

人は自分の知らないところで
誰かに迷惑をかけている。
今日の私だってそう。
知らないうちに、人を傷つけてしまったんだ。

もう、消えたい。


そんな考えをぐるぐるしていたら
いつの間にか眠っていた。
そっと目を開けると白に包まれていた。
そうかここは、大好きな人の胸の中だ。
優しく慰められながら、気づけば眠ってしまっていたんだ。

ベッドまで運んでくれたのも彼だろう。
時計は午前3時を指している。
あぁ、深い考え事をするにはちょうど良い時間だわ。

眠ってしまう前に考えていたことを思い出す。

そう、つまり私が知りたいのは
なら結局その自分で気づけなかった罪を償うには
どうしたらいいのか、ということだ。

もしかしたら罪を犯した私が罪を償いたいと願うなら、
罪を償えないのが罰なのかもしれない。

償えないなら、祈るしかない。


「エル…ねぇエル。」


その方法がわからないので、彼に聞くことにした。
エルは ん、とひとつ唸ると
すぐに薄目を開いてくれてそっと笑った。


「はい。エルです。起きたんですね。
どうしましたか。」


「あのね…、
教会に行きたい。懺悔がしたいの。
教会の行き方、教えて…?」


………


エルは黙った。
覚醒しきってるはずなのに、黙ってしまった。
そして ふ、と笑ってゆっくり口を開いた。


「In the Name of the Father, and of the Son,
and of the Holy Ghost, Amen.」


「………」


エルの口から突然発せられた外国語に
呆気をとられていると腰を引き寄せられた。
体もくっつき先程より近い距離で見つめ合う。
彼は真剣な表情だった。


「…いいですか真幸。
人が神を創り出したのは、
いつでも自分の全てを理解し、
見守ってくれる存在が欲しかったからです。」

「確かにその神に懺悔をすれば
反省を理解してもらえた気がして、
許された気がするかもしれません。」

「その神を本気で信じる人々はそれで良いのでしょう。
ですが、真幸が神様を本気で信じていないのなら、
教会まで行かなくてももうひとつ手があります。」



「それは、どういう手なの?」


「簡単です、
私はいつでも貴女の全てを理解し、見守っています。」



…エルが、私の神様ってこと…?



「…今回の件、
真幸が反省していること、私が知っています。」

「行ったこともない教会に懺悔をしに行こうとするくらい、
自分のしたことを悔いているのを私は知っています。」

「それくらい、真幸が
心の優しい女性だということを、私は知っています。
それではいけませんか?」


諭すように続けて話すエルの真剣な目と言葉に射止められて、
気づけば私の目からは静かに涙が流れ続けてた。


「私、覚えておきます。忘れませんから。」


「ありがとう、エル、ありがとう…」


「それと、人は失敗する生き物です。
それは、失敗しないとわからないことがあるからです。
失敗して学んだことを、忘れなければいいんです。
わかりましたか?」


泣きながらコクリ、と強く頷くと
エルは私を強く抱き締めていった。











「 In the name of L, I forgive you .」



















20130128
気を抜くと台詞だらけになります\(^o^)/
読みづらくてすみません
物語注釈の為に和訳をつけておきます。

「In the Name of the Father, and of the Son,
and of the Holy Ghost, Amen.」
→「 聖父(ちち)と聖子(こ)と
聖霊(せいれい)との御名 (みな)によりて。アーメン。」
「In the name of L, I forgive you.」
→「Lの名の元、あなたを許します」

ちなみに作者は宗教関連には詳しくありません。
神様もあんまり信じてません。



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