黄瀬(965)


 あつい。さむい。あつい。さむい。相反するふたつの感覚に襲われて気持ち悪い。

 でもみんなの休憩は終わったばっかだし、マネージャーの仕事は増えることはあっても減ることはない。

 空になったドリンクボトルがたくさん入った籠を手に、早くスコアの記録に向かわなきゃと考えつつも思うように足は動いてくれなくて。ふらふらして、どうしようもなくて、でもお仕事…しなきゃって、ぐるぐるして、気付けばもう歩いてる感覚なんてなかった。ただ暑くて、熱くて、でも汗なんか一滴も出てこなくて、とにかく気持ち悪い。

 そんな意識の中、最後に目に入ったのはきらきら光る黄色だった。





 次に目が覚めたときは、病院と思わしき場所のベッドで横になっていた。

 視界の左側に透明な液体が入った袋がぶら下がっていて、繋がっている管を目で追っていくと左手に針が刺さっていて。そしてその左手を、黄色の彼が緩く握っていた。


「涼、太」


 声をかけると弾かれたように顔をあげた黄色の彼―――黄瀬涼太は、今にも泣きそうな表情。泣くことはないんじゃないの?なんて思っても、彼はいつもこうなのだから仕方ない。


「よ、よかったっス…!もう起きなかったら、どうしようって、」
「ごめんなさい、心配かけて」
「そう思ってるなら、熱中症なんかなる前に水分補給とかちゃんとして」
「はぁい…」


 彼の一言で、自分は熱中症で倒れたのだと把握。病院で点滴をうってるということはよっぽど酷かったのだろう。心配するのも、無理はないか。明日、部活のみんなにもお詫びをしなくちゃ。


「これからは無理しないこと。約束っスよ?」


 でもその前に、目の前の過保護な彼を安心させることからはじめなきゃいけないみたい。

 手始めに握られていた左手に力をいれて握り返すとようやく笑顔を見せてくれた彼に、私の頬も緩んだのだった。







0821 (06:44)






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