悠太(KB)
授業中にプリントが配られたのでまわそうと振り向いたら、後ろの席の彼女がぐったりと壁に寄り掛かっていた。
ひとまず彼女の分のプリントだけとってもうひとつ後ろの人へまわす。
「どうしたの、」
いつもぱっちり目の冴えている彼女のこんな状態を見るのは初めてで、先生の目を気にしながら声をかけてみるも、彼女の口からは
ん、なんて返事らしくない返事しかでなくて。本格的に心配になってきた。
「大丈夫?」
「かべ、」
「壁?」
「つめたくて、きもちいよ」
もごもご。授業中という静かな状況じゃなきゃ聞き取れないぐらい小さな声。
まさかと思い、前髪の下に滑り込ませるようにして彼女のおでこに触れると、案の定。
(あつい…)
思えば、彼女の口から吐きだされる息はどこか熱っぽい。
「保健室行こう」
「…やだ」
「却下します」
「せっかく、悠太と席近いのに…授業抜けるなんて、もったいないもん」
うん、完全に熱に浮かされてるね、この子。でも、俺の可愛い恋人さんは普段は素直じゃないから、実はこんなこと思ってたんだ、なんてうれしかったり する。
このままだと彼女はつらいのを我慢してまで席に座ってそうなので、俺は先生に断りを入れるために前を向き息を吸ったのだった。
0527 (09:21)