一方通行(禁書)
「死なないで。お願い、」
今更実験の所為とは言わないが、そう言う彼女を置いてきてしまったことに後悔していた。
代償は大きいけれど無事に生きていると伝えたら彼女はどんな反応を示すのだろうか。笑顔を浮かべるだろうか。心配させないでと怒るかもしれないし、よかったと涙を流すかもしれない。どれも容易に想像できる。
でもこれももう終わりだ。
一度押したインターホンから指を離した。「はい」という声に「俺だ、」と一言返す。目の前の扉の向こう側からばたばたという音。
さぁ、本物の彼女は俺の想像を超えてくれるだろうか。
無意識に上がる口角を下げようともせず、もう時期出てくる彼女を想った。
0321 (23:33)