日向(AB!)
ふと目が覚めた時、見慣れない天井の下にいる自分に気付く。寝心地がいいふかふかのところに横になっている、そう理解した瞬間、いつの時代もどこの学校も大差ない独特のにおいを感じ、“ここは保健室だ”と、頭の片隅で漠然と思った。
すると突然、目の前に現れた人物によって視界の多くが青色に支配され、(きれいな髪、)――声には出さなかったけれど、これが彼に抱いた最初の印象。
「目、覚めたか?」
ぱち、ぱち。何回か瞬きをしてから、頷く。
「俺は日向!お前は?」
「わ、たし…?」
自分の名前がすぐには出てこなくて、しばらく呆然としてしまった。
私の返答を待っている日向くんは、なかなか声に出せない私に、なにも言わず頭を撫でる。
「もしかして記憶がねぇのか、」
「記憶、?」
そうだ。私はどうして見慣れない保健室で寝ていたのだろうか。さっぱり思い出せない。寝る前の記憶ぐらい、あるはずなのに。
って、あれ?なんだろう、この違和感。私、なんで知らない場所に、いるの?だって私…―――。
「…っ、」
「無理に思い出そうとしなくていいから…ゆっくり、な?」
あ、でも名前くらいは思い出してほしいけど!日向くんは笑顔でそう言った。
私…私の、名前……。
「あら、目を覚ましたの?」
考え込んでいる間にきたのだろう、日向くんの隣に赤紫の髪をした女の子が立っていて、この子もまた、笑顔でこう告げた。
「ようこそ、死後の世界へ!」
0328 (09:59)