君が私より一回りも年下だから、だとか、私が危険な人狼だから、なんて自分の気持ちにも彼女の気持ちも誤魔化して、それらしい言い訳をしてきたけれど、彼女はいつだってストレートで、羨ましいくらい一途だった。
まだ私が「僕」と名乗っていたときにだって、毎日のように彼女は私にただ一言「大好きよ」とだけ伝えてきた。当時の私はそれが照れくさくて、悲しくて、…でも嬉しかった。
友達より深く、恋人よりも浅い不安定な関係を保つ僕たちはきっと、自身の存在を表していたのかもしれない。なんて今になって気付くこともある。
「リーマス?…わぁ、懐かしい写真!」
「あぁ、名前。掃除をしていたらみつけてね」
月日を経ても、彼女は私の傍に居てくれる。そして優柔不断な私を理解して、受け止めてくれる。今となれば何よりも大事で手放したくない存在だ。
「…あ、これシリウスと罰則になったやつだ」
名前はいつだって僕を夢中にさせて狂わせる。謂わば満月のような存在。――なんて私には不吉な喩えだけれど。
時折、黒く渦巻く内側を私にさらけ出す彼女も、眩しいほどの笑顔を向ける彼女も、私を求めてくる彼女も、月の満ち欠けのように変化があって私はいつもキミに恋をする。
今、写真に心を奪われてしまっているキミ。大人気ないなんて思われたくなくて必死な私だけれど、本当はキミのまわりにあるもの全てに嫉妬する。
――ああ、写真のシリウスが憎いなぁ。
「…名前、」
キミは、僕を魅了する満月だ。
「"人狼を愛す"だなんて君は過激的なんだね」
「あら、それじゃまるで私がイカれてるみたいだわ」
「まあ、正気の沙汰じゃないよね」
「…そうね、私狂ってるのかも」
――貴方にね。
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よくわからなくなった。「私」と「僕」一人称は気持ちの表れ。
111130
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