処刑台の主役 | ナノ


▼ 06

昨日約束した通り、イタチ兄はあたしの修行に付き合ってくれることになった。あたしがあまりにも嬉しそうにしている所為かサスケは少々不貞腐れ気味だったけれど、サスケがもう少し大きくなったら一緒に修行しよう、と言う約束を取り付けて納得してもらったのである。

修業を始めて暫く経ったとき、不意にイタチ兄が何か思い出したかのようにあたしに問いかけた。


「名前は大きくなったら何になりたい?」

「え?‥うーん、しあわせになりたい!」

「幸せ?強い忍とかじゃなくてか?」


その質問に答えずに、曖昧に笑えばイタチ兄は難しい顔をしてただ一言そうか、と答えた。
何かになりたいとはあまり考えたことが無かった。ただこの幸せを守りたいとだけ考えてきて、むしろそれ以外のことはどうでもよかった。里の為だとか、火影の為だとか口には出さないけれどあたしにとって正直どうでもいいのだ。


「イタチお兄ちゃんは?」

「オレか?‥そうだな、名前やサスケたちを守れるようになりたいな」


そのために強くなりたい。そう呟いたイタチ兄は何かに耐えるように見えて、周りからかかる期待に押しつぶされてしまうのではないかと不安になってしまった。あたしは知っているの。イタチ兄が一族もあたしたちも里も愛しているからこそ、自身を蔑ろにする傾向にあることを。そしてそれが堪らなく不安で切なくなるの。


「あたしは守らなくていいよ。」

「…何?」

「だって、それでイタチお兄ちゃんがつらいおもいするのやだもん。」


それに、あたしはこれからつよくなるから!そう笑えば、ようやくイタチ兄も笑ってくれた。穏やかな空気の中、あたしはひっそりと幸せをかみしめた。


「そーだ、ごうかきゅうの術のコツ!おしえて?」

「ああ、そうだな‥――」


一人前までもうすこし。


120601

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