昨日が遠くで泣いた


例の一件。思い出すのもいやなんだが、猿飛に襲われた?いや、アレはどちらかと言えば自慰行為を見せられた。と言うのが正しいか。…まあ、とにかくあの一件があってから猿飛を避け続けていた、のだが。


「最近どうも佐助の様子がおかしいのだ。そなたは何か理由を知らぬか」


まさかの幸村様直々のご相談があるとは思わなんだ。え、これって俺のせいなのか?ていうか様子がおかしくなりたいのは俺の方だ。…だいたい長ともあろうものが主に迷惑かけんなよ…


「…否。」

「そうか…才蔵でさえ知らぬのか」

「でさえ…とは?」


その言い方じゃ、俺と猿飛すっげー仲良しみたいじゃん!?いっても俺、新人なんですけど!?心の友には程遠い存在なんですけど!?!?


「佐助から才蔵の話をよく聞くのでな!…ずいぶんと、仲が良いと感じたが…?」


あれれ〜、幸村様の様子がおかしいぞ…!?心なしか機嫌が悪いような。気のせいだと思いたいね、やだねこういう時にも発揮されてしまう空気を読むことに長けたこの忍能力!!オウ、ジーザス!


「ゆ、幸村様…?」

「佐助とは仲が良いのか」


もしかして:嫉妬
やすやすと俺の名前なんかだすから!!純粋な幸村様がヤキモチやいてんじゃねーか!!オー、マイ、ゴッド。痴話喧嘩に巻き込まないで候…!いやもうほんとこの職場怖い!!


「長と部下。ただそれだけの関係にございます。」

「…真か」

「無論」


即答した事にやっぱり心なしか嬉しそうに見えるのはきっと気のせいです気のせいであってください上司×上司なんて知りたくなかった…!!

ニコリと笑みを浮かべた幸村様にほっとしたのも束の間。


「では、才蔵は佐助とは関係が無いのだな!」

「…は?、まあ…えぇ、」


関係が無い。とは一体どういう意味だろうか。なんとも回りくどい言い回しをするもんだと一つ縦にうなづけば、幸村様はおもむろに立ち上がったかと思えば俺の腕をがっちり掴んで離さない。

ええっと、これは一体どういうことだってばよ…

やんわりと幸村様の腕を離そうにも、びくともしない。何かデジャヴを感じるどうしようだれかたすけて


「話には聞いていだが、実際に見ると…なるほど」


ふむふむと俺を品定めする幸村様に困惑が隠せないでいると急に腕を引かれ、あり得ないことだが胡座をかいた幸村様に股に座り込むかたちとなった。思わぬ出来事に、跳ぶようにその場から退こうとしたというのに、何故か後ろから抱かれるように腕を回され完全に包囲されてしまいました。まる。

事件は会議室で起こってるんじゃない!現場で起こってんだ!!!なんだこれ!!誰か説明しろ!!


「才蔵」

「ひっ!」


耳元で囁くように呼ばれた名に情けなくも弱々しい声を出せば、楽しそうに笑う幸村様。マジで純粋な幸村様はどこへ行ったというのだろうか…!!


「うむ、」


うむ、じゃねーよ!!
腹に回された手が蠢くように彷徨い撫でる。底知れぬ危機に今すぐにでも幸村様を説き伏せ叩き付け、ダッシュで逃げたいのに…っ!幸村様が猿飛ならそうした…っけど!!そんなことしてみろ!!いくら温厚な幸村様でも「打ち首だァァアア」となってもおかしくないやだ怖い死にたくない!!


「あ、あの…幸村様」


当たってます。とても。立派な。ブツが。俺のケツに当たっています当てないでください困ります。


「ちょっと〜旦那、何やってんの?」

「おお、佐助か!お前の言う通り中々に好い目をしておるのでついな」


つい、でこんな事になるのですか幸村様。
ため息と共に目頭を解すように摘めば、異様に視線を感じる気がした。顔上げれないあげたくない。見られてる…絶対こっち見てるよこれどうしろっつーの


「…お二方とも、仕事をなさってください。私も仕事があります故失礼致します。御前失礼」


猿飛と幸村様の大きな声を聞き流し、わざわざ信玄様から頂戴した、長期任務へと掛けたのだった。
とりあえず、ここの職場はホモホモしいです。まる。






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