かくれんぼ

お前はこの私の伴侶となるのだから。この言葉はわたしにとって呪いだった。
平滝夜叉丸、性格に難があるもののその実力は確かな忍たま四年生。良くも悪くも有名な彼に引き摺り回されているわたしの人生はきっと、ただの歯車に過ぎない。彼はわたしを放してくれないし、わたしは彼から離れる術を持たない。
小さい頃からのことだからもう慣れた。でも、本当にたまにだけれど、苦しくなることはある。そんな時はいつも裏々山に隠れて蹲り泣くのだけど、やっぱりわたしは、逃げられないのだ。

「見つけたぞ、奈緒。こんなところで泣くな、みっともない」
「……また」
「ん?」

また、見つかった。どうして。普段は自分のこと以外少しも考えていないくせに、どうしてわたしを見つけてしまうの。眼中に入れないまま放っておかれたなら、そのまま消えてしまえるのに。
涙が溢れた。

「当然だろう、お前はこの私の伴侶となる女なのだから。類稀なる美しさを誇るこの滝夜叉丸の隣に立つならば、そのような涙塗れの顔は相応しくないぞ?だが心配するな、私の突出した美貌はそのくらいではぐだぐだ」

こちらが呆気に取られるくらい一方的に喋り続ける彼は、どこからどう見てもやっぱりいつもの滝夜叉丸。

「ねえ、帰ろう。暗くなるよ」

わたしは立ち上がって滝夜叉丸の手を引いた。重たかった心は涙を絞ったぶん軽くなったようだ。
本当は、滝夜叉丸を試すようなことをしていると自分で分かっているのだ。どうしての気持ちの裏にある安堵が、浅ましさを浮き彫りにする。でも、滝夜叉丸は。
仕方がないから、縛られてあげよう。自信過剰で、周りが見えていなくて、わたしを捕まえて放してくれないあなたの隣に立っていてあげる。どんな小さな歯車だとしても、ひとつが回るからもうひとつも回る。きっとそのはずだから。
でももし離れたりなんかしたら、あなたの何倍も面倒な女が追いかけるからね。ちゃあんと覚悟をしておいて。


20190201
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