あたためられる恋心

君に好きだと言えたら、世界は今より輝くのだろうか。

「ねえ、今日はいい天気だよ。本なんか読んでないで、外に出なきゃもったいないと思うのだけど」
「つまり私に裏門の掃き掃除を手伝えと?」
「えっなんでバレた」
「それはな、お前がさっき吉野先生に掃除を言い付かっているのを見かけたからだ」
「やだ三郎ったらそんなにわたしのこと見てるの?」
「馬鹿は休み休み言え」
「はあい」

慣れ親しんだじゃれ合いだ。わたしは素直に引き下がり、三郎の横に寝転んで目をつむった。近すぎず、遠すぎず、気の置けない友人の距離。
ああ、掃除なんてやりたくない。ここでぐうたらしていたい。わたしにとってこの時間がどれほどきらきらした大切なものか、吉野先生には分からないのだ。
隣でパタンと本を閉じる音がした。瞼を押し上げると、思いがけず三郎と目が合ってしまって心の臓が跳ねる。びっくりした。

「ほら、行くぞ」
「え?」
「掃除なんてさっさと終わらせてしまえ。仕方ないから手伝ってやる」
「ほんと!やった!」

歓声を上げて飛び起きる。なんということだ。この後も三郎と一緒に居られる。とくれば、たとえ溝川掃除であっても最高の時間だ。
わたしの気分は急上昇、自然満面の笑みになって三郎に呆れた顔をされた。

「お前……本当現金なやつだな」
「三郎はいいやつだね」

カッコよくて優しくていいやつで、大好きだよ。と言う勇気はやっぱりまだない。

「ねえ、落ち葉集まったら焚火しようよ。寒いし」
「お、いいなそれ」

ああ、その笑顔も好きだな。
好きで、好きで、この気持ちを伝えたくなる時もあるけれど。わたしの視界は今でも目一杯の輝きで満たされてるから、まだもう少しこのままがいい。今日もあなたが好きでした。


20181118
診断メーカーより
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -