シルク·ドゥ·エレジー | ナノ


▼ 3



「だからなんでハクベイがいるんだよ!暗部だろお前は!」
「任務に配属された友人が仮病を使ったので私になりました。あの子は今頃デートです」

自分が担当する下忍が眠りについたころ、待ち合わせしていた上忍にまぎれ見知った白いフードからこれまた最近よく見る白い髪が見えアスマは思わず声を荒げた。
片手をあげこんばんはと挨拶をするハクベイがどうどうとそれを宥める。
「馬じゃねえよ!」
もうやだこの里、任務放棄してデートするの流行ってるとか!
嘆き空を仰いだアスマがそういえばこの巻物奪還忍の三人一組にはカカシもいたことを思い出した。
まだ時間前ではあるもののあいつの遅刻癖を甘く見てはいけない。呼びに行かなくちゃいけないのか。
なんでオレはこんなお袋みたいな事してるんだと頭を抱え後ろを向いたとき、その塀の陰に同僚の手を拱く影を見つけた。

「ハクベイさん一緒なの?」
「メンバーが変わったそうだ」
「そういう事です、よろしくお願いしますねカカシさんとアスマさん」
いつの間にか近寄って来ていたハクベイが背中の荷物ごと身体を跳ねさす男2人に握手を求める。
油断していたとはいえ上忍である自分達に気付かれず真後ろまで迫っていたことで実力は確かなことはわかっている。
目の前に差し出された意中の相手の手を走りと握ったカカシが「オレが貴方の心を取り戻します」と叫んだ。
先日の稲刈りの時に“ハクベイの恋人”と称された米と今も不毛な争いを繰り広げているらしいカカシに「取り戻すのは巻物ですよ」と笑うどこまでもマイペースなハクベイ。
……今からでも遅くないからメンツ変えてください火影様。アスマの願いもむなしく、先に敵を諜報していた部隊が待機している自分達を見つけてしまっていた。



「まだ見張りの交代まで時間があるから休憩を取る」
諜報部隊から教えられた情報を頼りに作戦を組み立てた俺達は木の上で気配を消しながら休憩をしていた。
案の定いつもなら率先して計画を立てるカカシが今日は遠足に行く子供のように腑抜けているので、柄じゃないのに隊長をやることになってしまったアスマがストレスに痛み始めた胃をどうにかしようと煙草に手を伸ばしかけ、膝に戻した。
手放せなくなっている煙草をすんでのところで止めた自分はまだ理性が働いていたようだ。

「アスマさん、食べます?」
ニコチンを摂取できずに口寂しさを覚えていたアスマに投げ渡されたのはお握りだった。
銀シャリですと既に頬張っているハクベイがもごもご続ける。「塩だけでもご飯はやっぱりうめぇですよ」そうじゃねえよ。
あとカカシもちゃっかり隣を陣取ってんじゃねえし、……こっち睨むな自分で強請れ。

「あー……、お前飯食ってこなかったのか?」
「いいえばっちり食べましたよ、でもご飯があれば安心するじゃないですか」
それに私燃費悪いんです。そう言ってリュックの中身を見せてきたハクベイ。割と大きめのそれに半分くらい銀シャリが詰まっていた。
いっぱいあるんでカカシさんもどうぞ。そう言って隣にいたカカシにお手製のおにぎりを手渡しする。
離れてないから投げられることはなかったお握りが1つ、カカシの掌に置かれた。真下と正面を交互に見て「いいの?」なんて白々しく聞き返すカカシ。
「私の手作りですがまだまだありますので」
1つの単語に目を光らせたカカシが口布を下げ興奮で小刻みに震える手でお握りを口に運んだ。
お前はさっき長引きそうだからって任務前にオレと夕飯食っただろ。ヤバい動けないかもとか口に出るほど食ってたじゃねえか……。
同僚の消化具合を心配しつつ馬鹿なことをしでかさないか見張る。興奮しているカカシと並んでいるハクベイは、大好きな白米が食えて誰が見てもわかるほどご機嫌だった。
ぷらぷらと足を揺らし次のおにぎりを頬張りだしたところでようやく味わいまくっていたカカシが一口目を胃に落とした。

つぅ、と同僚の頬を伝った一筋の涙を見て慌てるハクベイがまずかったかと聞き返す。お前はお前でこれだけわかりやすいのに気が付かないのな。
不安がるハクベイのおにぎりを持っていない方の手を握り、2人仲良くライトアップされる。
……ような気がしただけで実際は暗闇だけど。


「めちゃくちゃ美味しいです」
「オレ今ハクベイさんの手作りを食べてる」と亡き父に宣言を始めたカカシ。手作りご飯ってお前はそれで本当にいいのか。
感動するカカシに良かったと胸をなでおろしたハクベイさんまで「カカシさん…っ」だなんて言葉詰まり始めていた。
期待する同僚が袖で涙をぬぐいハクベイの方を見る。頬を赤らめたハクベイにカカシもまたへにゃりと眉を落とし頬を染めた。
「ご飯同盟結成しましょう!」
予想外というか、予想通りというか。案の定カカシの言ってほしい言葉とは見当違いの方向にすっ飛んで行ったハクベイの反応にカカシはアレェ?!とでも言いたげに目を剥いた。
いつも気怠げだったあのカカシがハクベイに出会ってからコロコロと表情を変えている事に驚かなくなっていたアスマは慣れたやり取りを眺めていた。


ああそういえば任務だったわ。


/



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -