ポインセチアは甘くない | ナノ


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ナマエはしきりに頭を回転させて打開策を探っていた。
まさかデートが複数で、彼氏役の男が2人ずつ顔見知りだのでつながっていき、あれよあれよという間に合コンのような状態になるとは思わなかった。
酔ったふりをしながら目の端でとらえたのは店員のフリしている仲間らしきの男達が潜んでいる休憩室。
先ほどトイレに行った時にドアがうっすらとあいていたために会話が聞こえてしまったのだった。
この会場の雰囲気を作り出すのに慣れているらしい、常習犯なのだろう。……噂では聞いたことがあった。所謂女狩りである。
自分の彼氏がまさかそう言った集会のメンバーだとは思わなかった、騙されたのよりまず逃げなくてはと言う考えに行ってしまう自分はやはり酔ってはいないようだ。
ヒールは幸いそこそこの物だったし、パンツルックだった為動きやすい。いやでも地下にあるこの場所から階段を駆けのぼるのは少しキツイか。
確実に逃げるためには囮を使えばいいが、一人で逃げるにも少し会話をしてしまったため彼女たちを残していくには心が痛む。
そもそも自分にも両隣で男ががっちりガードしているから難しいものがあるだろう。

「(まずいな……)」
何も知らずほろ酔い状態になりだした彼女たち全員を助けるなんてこともできないし、これ以上飲まないと男たちに不信感を与え、かえって警戒を強めてしまう。
グラスに口を付けながら自身の彼氏である高沢に寄り掛かっておいた。
触られる肩にはもはや嫌悪感しか沸かないが仕方がない。お互いの容量と頭の回転の良さはわかっているから下手に出るのは控えねばならない。
残り少なくなったグラスをクイッと傾け、攻撃に出ることにした。
「高沢君、甘ぁいお酒を注文したいなっ」
他のカップルに見せつけるように高沢の口元に指を這わせる。隣の知らない男がごくりと喉を鳴らした。
コイツは新人なのだろうか、偽り方が下手糞でぎらぎらした目を隠しきれていない。
高沢も高沢で「足元ふらついてるしあんまり強いのは飲まない方がいいよ」だなんて演じる。
「(オメーコノヤロー、ぜってー殴ってやっからな!)」
品のない叫びを心の中で消化し大丈夫よなんてほんのり頬を赤くした。
第一ビルの裏手からのみ行けるこの洒落たバーのようにセッティングされた地下。
私は残り半刻ほど役者を演じ切って絶対に逃げ切ってやると怜悧な目を細め隠した。


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