ポインセチアは甘くない | ナノ


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「意気地なし」
同じサークルに所属している小南が俺を小突いた。
狙ったのか非常にガードが甘いところに入り、脇を抑えうずくまったオレに頭上から「アナタはそれでいいの?」と振ってきた。
大学を出て忘年会の買いだしに来ていた俺と小南はナマエと彼女が連れだっていた高沢に出会った。
ナマエの彼氏がひと月以上続いているのは初めてだ。俺の顔を見て「これから木の葉駅の第一ビルでデートなの」と得意げに笑う。
どうも、ナマエに腕を絡められ隣を歩く高沢が恥ずかしそうに、でも嬉しさをにじませ、はにかみながら会釈していった。
ナマエが愚痴会を開かないところを見ると、あいつは本当にいい奴なんだろう。
「……ナマエが幸せなら良い」去っていく2人の背中を眺めながら少し拍を置いて答えた俺に小南はため息をついた。

「サスケのお兄サマとご友人さんじゃん」
何度か耳にした声色に俺たちは振り向いた。弟の友人の鬼灯……確か水月君だ。彼が休憩中だったオレ達を見つけて手をあげた。
ちょうどあいていた丸いテーブルの3つ目の椅子から荷物を自分の足元にどけると、耳からイヤホンを外し嬉しそうに八重歯を見せる水月君がそこに座る。
覚えててくれたんだと返した彼に弟の大切な親友だからなと答えるとその言葉に照れたのか頭を掻く。
サスケと違い表情や行動が素直で人当りが良い彼は弟とはまた違う系統でモテるのだろうと先ほどのナマエにあてられたオレはそんなことを考えた。
「ところで、さっきのお姉さんは知り合いなの?」
ちらりとナマエが去っていった方に首を向け問う彼に「……大切な幼馴染だ」と答える。隣の小南は呆れたように視線を外した。
ふぅん……口元に手を当て少し悩んでいたらしい水月君は意を決してオレに向き直った。
「高沢でしょ、ボクの学校の卒業生なんだけど女漁りは飽きたのかね?」
耳を疑ったオレが顔をしかめると水月君は両手をあげ慌てて「ま、まあ彼女を作ったってことはそういう事だよね!」と自分で言葉を打ち消した。

「水月君かしら、話してもらえる?」
私たちナマエの事大切なのよ、今まで傍観を決めていた小南が詰め寄ると顔の近さに少し頬を赤らめて反り返る。
観念したと頬をひきつらせたまま笑う水月君がぽつりと話しだした。
「高沢と、あいつのつるんでたやつらは月一で女の子を複数連れてパーティ開くんだ、場所は大体木の葉駅周辺の関係者以外入れないようなところを借りてる。……ええと、つまりそういったパーティなんだけど」
ボクはあまり仲良くないから高沢先輩が変わったかどうかはわからないよ。
もじもじとばつの悪そうに身体を捩らせた水月君から小南に視線を移した。小南の橙の瞳に映ったオレの顔は動揺していた。

「行きなさい」
ナマエは必ず回収しなさい、小南の上から目線の命令口調も気にならなかった。
オレは財布から3人分の飲料代を置き小南に荷物を任せる。
水月君が小南に荷物持ちをオレの代わりに命令されてるのを背にオレは冬のショッピングモールを走り出した。


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