ポインセチアは甘くない | ナノ


▼ 12



「ええと、みなさん助けていただきありがとうございました……」
イタチの黒いロングコートを膝に置き頭を下げた、
正面にいる小南が瞬きすらせず見下ろしているためにナマエはさらにその身を縮こませる。スキニーパンツ歯回収できなかったため、部室にあったスウェットを着ている。
「まあまあナマエさん、その前に顔洗ってきたらどうです?」
額のコブがすごいことになってますし、それに舐められてませんでしたか?と頬を指し遮った鬼鮫にイタチが振り返り睨み付けた。
おお怖い怖いなんて笑いながら小型の冷凍庫から氷を取出し氷嚢を作ってくれている鬼鮫の言葉に記憶から飛んでいたナマエはああと低く唸り水道で冷水をぶっかける。
口臭が臭かったから映ってるのではないだろうか、演技の為厚めの化粧をしていたからと言ってファンデーションが防いでくれるわけがないのだ。
石鹸を擦りつけるとあの時の感覚がナマエの体中に襲ってきて盛大に舌打ちをした。汚い。
高沢は社会的に抹殺してやる……、そう心に決め3度目の石鹸を流し先ほどの円を描く人の檻の中に戻った。
ちょうどタオルに包んで渡してくれた氷嚢をトイレでうった頭部にあてる。
気付かなかったが氷嚢を当てるのですら痛い程に飛び出たそれにまた舌打ちをかましたくなった。

「ナマエ、貴方なら一人で逃げれたでしょう」
ここまで大事にならなかったし、イタチが気づいていなければやられていたのよ。見下ろす小南が足を組んだ。
随分と様になっているその格好に口ごもったナマエを見て「いつもの頭が良い故の馬鹿さが発動したんだろ」とサソリがソファに全身を預けた。
「何で全員を助けられると思ってんだテメーは」
「ぐっ…」
言い当てられたナマエは苦い顔で黙り込む、大体ナマエだって全員を助けられるとは思ってはいなかった。
見捨てることが出来なかったというだけで一人で脱出するのは考えたし、あそこで今まで見なかった主催の男がいなければイタチを呼べていた。ただただタイミングが悪かっただけなのである。
面目ないと頭を垂れつつ小さく言い訳をするナマエに「私たちは仲間のアナタが大切なの、他の子を助けるために犠牲になるなら許さないわ」とバッサリ断ち切る。
「オイラも小南に同意だ。後ろ髪は引かれたら切ればいいんだ、うん」
頷き同調したデイダラにいよいよ言葉を発せなくなってきたナマエを今まで一切話に入ってこなかった飛段が間に入る。
「まーコイツも反省してんだからよ」
「黙りなさいモノホンの馬鹿」
今日という今日こそはナマエの頼まれると動ける人がやる方が効率がいいだの口答えする性格に一言言わないと気が済まないわ。
青いシャドウが蛍光灯の光を受け威圧感の3割増しとなった小南の捲し立てた長ったらしい文句に狼狽した飛段が負け角都の資料作り手伝って来ようと逃げた。
割って入っておいてなんて薄情な……、ナマエは捨てられた子犬のような目で銀髪を見たが飛段は引かれた髪は無視した。

「大体貴方はイタチがどれだけ」
「小南、ナマエは明日も講義がある。もう帰してやってくれ」
再び口を開いた小南に自身の腕時計をちらりと確認したイタチがナマエ夕方のモール以来初めて声を聴かせた。


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