ポインセチアは甘くない | ナノ


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冷たい空気を肺に入れ籠った空気を吐き出し交換したナマエ達の目の前に急ブレーキで止まったワゴンにまだかと自由になっていたナマエが瞬時に周りに目を配る。
建物と車の隙間が細いため逃げにくい、引きずり込まれた車から脱出しなければならないかといつでも中にいるであろう男たちへ攻撃できるように身構えた。
勢いよくスライドしたドアから見えたのは座席を折りたたんだ小南だった。

「イタチ、貴方は後ろに入って」
暗闇で光る彼女のオレンジの瞳が赤いイタチの瞳と交差し、震える彼女たちを押し込むように入れたイタチから私に向き直る。
「言いたいことは色々あるけれど……、とりあえず大学に行くわ」
乗りなさい、腕を掴まれたナマエがつんのめるように引きずり込まれると後ろから飛段がのしかかりつつ雪崩れ込んできた。
足を折りたたむように持ち上げられ、ドアをスライドさせていた途中で動き出した車の振動が直に腹へと伝わる。
「あいつらは先にトビがハイエースで回収した」
私が車に乗り込む前にあたりを見回していたのを見ていたらしい、運転席に座ったペインがバックミラーで後ろを確認し飛ばしながら声をかけてきた。


流石に20人も入れば部室は狭かった。
心身ともに疲弊した彼女たちを返したのは1時を過ぎてからだった。
今すぐ返してやりたいが、連絡が取れなくなったら困ると先に必要な被害の確認と届の話を進める。
全員が未遂ですんだため大事にして自身の経歴を傷つけたくないと返した為、証拠をきちんととって来ていた角都に件の一任が任される事になった。
「良かったな角都」
「示談をしてでも貰わないとオレが動く見返りがないだろう」
相変わらず口を開けば金歳か出てこない友人に飛段は「お前その一言目に金が出てくる口、直した方がいいと思う」と冷静に突っ込みを入れた。

暗闇にまぎれながら証拠としてのしかかる画や声を回収している間、ついでに拾った彼女たちのバッグと上着を返してやる。
手に乗った自身の荷物の重量感に安心したかのように泣き出した数人にサソリがうるせぇと舌打ちをしていた。


待機していたゼツが淹れた茶を飲み干すと、ここまで回収してきたサークル用のハイエースでペインとトビが送っていくと彼女たちを車に詰めた。
残されたいつものサークルメンバーは、証拠をまとめる作業へ入った角都以外がナマエを囲むように座ったので、苦い顔をし背を縮めた。


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