ポインセチアは甘くない | ナノ


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「今回もそれぞれ役目を果たした様で何より」
先ほど到着したばかりの男は声をあげた。一段高いところでマイクを若干音割れさせた男を見てナマエは目を覆いたくなった。
床に仰向けにされたナマエの両腕はソファーの脚に革で固定されている。そのソファーも床に固定されているため動くに動けないのだ。
一緒に逃げ出す算段を立てていた2人も少し離れたところで同じように固定されている。ナマエより大人しくなかった彼女たちは何度か殴られており、恐怖で抵抗する気が失せてしまっている。
低い視点で周りを見渡す。ざっと30人弱の男たちにまぎれ、ちらほら年の離れてそうな人間も見えた。
学生主体の組織ではあるが、バックに金が動いてそうだと何人か恰幅の良い年配の男達がソファーに座っているのを確認した。
「(……こりゃぶち込んで社会的に抹殺するのも無理かな)」
ナマエは復讐することもかなわず泣き寝入りすることになりそうだと舌打ちをしたが噛まされたタオルが邪魔でくぐもった声を出しただけだった。
「お待たせいたしました、用意が出来たのでご紹介いたします!」
男は声高らかにそれぞれ10人の名前を呼んでいく。泥酔した子の中には昏倒していて危険な状態の子までいた。
主催の隣に並んでいた男たちは大人しいのが好きな方はそちらへとVIPらしき年配達を優先して案内している。

「今回はとても気丈な子がおりまして」
そう言ってちらりと一瞥すると近くにいた男がナマエの口のタオルを外した。
困惑するナマエの様子に満足そうに口に弧を描いた男は指を鳴らす。
「普段はガードの固い子ですが、そんな彼女も今日が初めて。記念すべき一発目はぜひとも良い声で啼いていただきたい」
「(ちょっと待ってなんで知ってるの……)」
皆さまよろしくお願いします、それでは長々と失礼しました。
主催がマイクを置くと同時に店内に大音量の音楽が流れ出した。悲鳴をかき消すためのようだ。
だがそんなことを冷静に判断する余裕がなくなってしまっていた。まさかの情報に流石に青ざめたナマエの周りに集まり始める男たち。
いまだ恐怖の色を映さないナマエの瞳に恰幅の良い男たちが集った。恐怖にガタガタと歯を言わせている茶髪と黒髪には学生たちの方が多い。
下卑た笑いを浮かべた男の一人がナマエのシャツに手を掛ける。

「本当に初めてなのかい」
「彼氏役の俺に多額のお金を払っておいて何言ってるんですか」
頭上に立った高沢がしゃがみこみ、「な?」と笑った。


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