宝石閑話 | ナノ


▼ 大きな三姉弟と思春期



「ナマエー!」
我愛羅君のスパルタ指導の下必死に腹筋をしていた私は背中からタックルを仕掛けてきたテマリちゃんにより戦闘不能に陥る。
横に体をひねる様にして倒れた私の上にテマリちゃんが乗っかっているのだが、子供の時とは違い発育が大変よろしいので、すごい、あの、身体折れそう……。
「テマリ、ナマエが死んでしまう」
「やべっ」
我愛羅君が彼女の腕を引き私の上からどかしてくれた。
やってしまったと心配そうにのぞきこむテマリちゃんは相変わらず勝気で可愛らしいんだけど正直今のはやばかった。出ちゃいけない物が出かかってた。
私の足首を抑えたままの我愛羅君が空をじっと見つめていたかと思ったらはっしと空を掴んで口に押し込んでくれる。
人づきあいが増えてノリが良くなったのは嬉しいんだがまさかの天然だね?良いよ可愛いと思うよ、可愛いは正義。

どうにか出かかっていた魂を体内に落ち着け慌てて部屋に飛び込んできたテマリちゃんの用件を聞く。
はっと思いだしたテマリちゃんがきょろきょろと周辺を見渡して一冊の雑誌をとり私の目の前へずいと近づけた。

「カンクロウこんなもの買ってやがったんだ!」
倉庫を整理しようと箱を開けたらカンクロウ君の私物が紛れ込んでいたらしい。
ピンクと肌色を基調としたあはんうふんな雑誌をバンバン叩き男って本当にと怒ったり顔を染めたりとテマリちゃんが忙しそうに弟への暴言を吐き捨てる。
カンクロウ君こういうものはちゃんと自分の部屋に隠しておかないとダメだよ……。
20を過ぎた女だったら五分五分ではあるものの冷めた反応をしてくれる人もいると思うが、思春期の女の子である彼女がいやらしいと騒ぐのも無理もない。
表紙を見る限りアブノーマルな性癖はしてないようだと見当違いの方向に安心を見出した私の肩を掴みがくがくと揺する。
「ナマエも何とか言ってやってよ!」
「テマリここに……ぎゃー!」
バンとリビングのドアの主に蝶番に酷い仕打ちをしながら入ってきたカンクロウ君が私の手にある本を目にした途端青い顔をして叫んだ。
テマリちゃんに攻撃しようとタックルしてきたカンクロウ君だったが、彼女は動きを察知し避けたため彼もまた私の上に転がり落ちた。
「ゲッフォ……」
鳩尾に肘が入り声にならない声をあげてもんどりうつ私に、彼のお姉ちゃんと同じように慌てて退いてくれるがダメージが蓄積されていてすぐに回復できそうにない。
息の詰まった私が咳き込んでいれば衝撃で飛んでいった本は我愛羅君の元に落ちたらしい。
パラパラと中身をめくっていた彼に気が付き二人はさっと顔を青くした。

「我愛羅、そんなの読んじゃだめだ……」
「カンクロウ」

テマリちゃんの言葉を無視して兄の方を見つめた我愛羅君に「は、はい」と背筋を伸ばし正座する。
弟から怒られると思っているらしい、威厳もへったくれもないカンクロウ君に我愛羅君は聞き捨てならないことをぶっ放した。

「このナマエ似の女のページ、全部コピーしてくれ」
思わず本を丸めて我愛羅君の脳天でポコンと良い音をさせてしまった。


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