宝石閑話 | ナノ


▼ 仔狸と掃除



今日も仔狸が腰に引っ付くのでコアラ状態のまま掃除をする。
我愛羅君の腕の力は強いので私が支えなくてもめったなことで落ちないからまあまあ楽だ。重いけど。
高いところの埃は我愛羅君が砂にはたきを持たせてぱたぱたしてくれるので椅子を持ってこなくても良くなったのが地味にうれしい。
しかもその砂は一粒残らず我愛羅君が瓢箪にしまいこめるようになったので汚れることはない。
ふんふん2人で鼻歌を歌いながら轟音を立てる掃除機に吸い込まれていく埃、実に爽快である。
偉い人が言っていた気がする、掃除は楽しむものだと。

「ナマエ、そういえばこの歌なに」
「私の国で流行ってた歌だよ」
私が毎日のように歌っていたから我愛羅君も完璧に覚えてしまったようで私の鼻歌に歌詞をのっけてくれるようになってしまった。
だいたいこのキャッチーなリズムに激しいメロディが悪い。耳に残るそれは最初同僚が教えてくれたものだったが、私も例にもれず一時期中毒になった。
しかも何故かそれを知り合いの結婚式で出し物として踊ったのでダンスまで習得している。
本当に何でこれを出し物に選んでしまったんだろう、いまだに疑問である。

「ボクね、これ好き」
「私も好き、演奏する?」
「楽器ないよ?」
フフン、得意げに鼻を鳴らし笑う私に我愛羅君が首をかしげる。数多の酒の席という名の戦場を潜り抜けてきたから宴会芸は得意なんだぜ我愛羅君。

「はたきを砂から回収するのだ我愛羅よ!」
戦隊物にいる参謀のようにぐぐいと手を伸ばせば、背中に引っ付いていた我愛羅君が元気よく「ハイ」と言って飛び降りた。
ご機嫌なときの我愛羅君は他人と遊ぶことのなかった時間を取り戻そうとするかのようにノリにノリまくってくれる、2人の時だけだけど。
自分もとめた掃除機の長いノズルを本体からはずし脇に挟む。真似っこの得意な我愛羅君は鏡合わせにしなくても同じように構えた。

じゃかじゃかかき鳴らす様に腕を上下に動かし口ずさむ。
歌詞が無いところへ挟み込むようにメロディを入れてやれば、頭のいい我愛羅君はすぐにやり方を覚え身体を音に乗せはじめた。
ボーカルをやってくれるらしいので我愛羅君に任せギターパートをジャガジャガ言いながら我愛羅君に合わせる。
ノリノリである、普段の我愛羅君から考えられないほど馬鹿を一生懸命やっている。天使は馬鹿を演じても天使。ここテストにでるよヘーイ!


「我愛羅、ナマエ」
「遊びに来たじゃん」

あ。


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