▼ Rainy Ghost
外からの風が私の肌を撫でた、思わず身震いする。
空気を入れ替えていたがもう十分だろうと私は冷たいアジトの簡易的に作られた小さな小さな窓を閉めた。
窓と言ってもガラスなんてもんじゃなくて木の板だ。
はめ込み式で、猫くらいしか通れない様な小さな小さな穴に蓋をした。
「イタチさん寒くないですか」
ゲホゴホと後で咳を繰り返す男に問う。彼は数日前から風邪をひいていた。
犯罪者でも風邪をひくのかなんて思ったらいけない。どんなにしっかりしてる人だって風邪位引くもんだ。まあ私も最初同じことを思ったから強くは言えないが。
ただ原因はこのアジトにあると思う。
じめっとしててすごく居心地が悪い、さらに風が通り抜けるたびに縮み上がりそうな寒さを植え付けていく。リーダーはもっとましな場所を選べなかったのか。
一緒に戦ったことないから今のうちに不満垂れ流しておく。
みんなが一目置くくらいだし技見たら多分何も言えなくなるんだろうなぁ。
「うつるぞ」
「ならイタチさんが気を付けてください」
今日はイタチさんを看病しろって任務が出された。
確かに私は金集めにもってこいな賞金首狩り専門の便利人間だけど戦力にならないから、強いイタチさんに早く治してもらってバリバリ働いて欲しいのだろう。
「家事はまあまあ出来るんで何でも言ってください」二の腕にコブを作ろうと力を込める。へにょん。最低限の筋肉が皮を押して主張することはなかった。
「じゃあ、すまないが暖かいものが欲しい」
「オーケー、ココアで良いですか?」
お茶がいいですか?それともしょうがスープにしますか?さっき冷蔵庫見たらネギもありましたしいろいろぶち込めます。
つらつらと風邪の時に私が良く飲んでいたものを浮かべあげる。
私ならネギとしょうがのスープだけど薬味は人を選ぶからおすすめはしないでおく。
しとしとと外を流れ落ちる雫にまぎれかすれ声で「前者で」と答えた。ふむふむイタチさんは甘党か。
ちょっと待っててくださいね、そう告げてイタチさんの部屋を出る。沸騰した湯をカップに入れ、匙でくるくるかき回す。底に沈んでた粉がさらにお湯を濃く色づけた。
「どうぞ」
零さないように持ち帰るミッションに成功した私が「熱いですよ」と言いながら半身を起こしたイタチさんに渡す。
ふぅふぅと冷ましながら喉を鳴らすイタチさんの睫毛が長くて少し嫉妬。美形は何をしてても絵になる。
あーあうらやましい。
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