ヤスデ | ナノ


▼ アンタの愛撫ってままごとみたいね



最初は遊びの邪魔をするいやな奴だった。
ヤスデが来てから、角都は自分たちが動かずとも対象を気絶させることのできるヤスデの能力を買った。
奴の性格を知ってか知らないが、べろべろのでろでろに甘やかすからヤスデも従者のごとく言う事を聞く。
まあオレの出番が減ったわけだ。たまにへまこくからよ。
尻拭いさせてたから仕方ねえんだけど強いやつと戦えなくなったのが気にくわねぇ。
日に日に増えてく舌打ちにヤスデはそのたびに顔をしかめて反応した。

リーダーに呼ばれた角都が一人脇道に逸れて通信をはじめ、手持無沙汰になったオレたちの前に抜け忍が徒党を組み現れた。
そりゃもう喜んだ。なんせ止める角都はいねぇ、ヤスデは賞金首なのかわからねぇ。暇つぶしには良さそうな強さも持ってそうだ。

「テメーは手出しすんなよ!」
「言われなくとも」

死体を見慣れているからか女にしては殺しへの反応が薄い。
角都さん呼ぶのも面倒なんで観戦してますと手ごろな石の上に座り込んだ。
久々の玩具にしてはすげぇラッキーだった。


「はぁ、気持ちい……」
でろりと飛び出た俺の内臓を腹に詰め込みつつ、オレはジャシン様へ久々の祈りを捧げられた事に対する快楽を得ていた。
千切れた足が林の中に転がって行っちまったが儀式が終わったら回収しに行けばいい。
角都はいったい何をしてるのかわからねぇが急かされるのは気にくわないのでまだ帰って来てくれなくていい。無言で観戦していたヤスデがいつの間にか消えていたのに気が付いたのはその時だった。
あーあ、あいつ角都呼びに言ったぜ絶対。まあもうすぐ儀式終わるからいいけどよォ……。

スゥ…と消える肌の色に気付きオレはようやく立ち上がった。片足しかないからバランスがとりにくい。あーあ。
がさり、と林の中からヤスデが出てきた。
「角都は見つかったか?」なんて片手をあげて迎えれば右手を差し出された。正確には右手の物を。


「おー?なんで?」
「縫ってもらうんですよね?飛んでった足を貴方が探してる間角都さんイライラし始めそうだし」
だからとってきました、ご主人サマに迷惑かけるんじゃないワン!みたいな事を説教垂れるヤスデ。
ヤスデなのに犬かコイツは。意味わかんねェぜ。
まあ手間が省けたことは事実だし、オレまじ優しーからちゃんとお礼いうじゃん?
それに目を細めたヤスデが「飛段君が不死なのも戦闘の仕方も知ってるんですけど」見てて痛いのでせめて吹っ飛ばさないでください、一人になっちゃったときに身動き取れないのは危ないから心配です。だなんて未来永劫あり得もしないことを言いやがる。

……ん?
心配……、してんの?ヤスデが、オレに?


ヤスデ結構いい奴なんじゃね?舌打ちすんのやめてやるか。
わりぃな、ゲハハ。なんて出会ったヤツが全員下品だと評価する笑い方をしながら肩を叩けば「ん、わかればいいんです」なんて満足そうに頷いた。
アレ、アレアレ?まじかよコイツ見方変えれば可愛いんじゃねえの……?オレいままで何やってたんだ。舌打ちだ。
頼むから角都は空気読んでまだしばらく帰ってくんな。
今懐きかけた飼い犬落とすのでヒマじゃねえんだ。


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