ヤスデ | ナノ


▼ Bloodless emeth



ガツン。森に鈍い音が響く。頬骨に響いた鈍痛に顔を歪めた。
またか、なんか前にもあったな。ああそうだ、同じ奴だった。そりゃ既視感感じるわ。

「どうして殴る」
「躾の足りねぇガキがいるからな」
だからと言ってこれは毎回やり過ぎなんじゃないかと思う。あと私は殴られるようなことはしてないはずだ。
サソリは私を殴った武器である骨ばった尾をゆらゆらと揺らした、体に尾があるなんてとんだびっくり人間だよね。


リーダーに言われサソリと臨時のペアを組まされた時は心底いやな顔をしてやった。
飛段君は舌打ちはしつつもなんだかんだで暴力を振ってきたりはしないから良い人だ。犯罪者に良い人もあるかと問われれば黙るしかないけど。
だから行動するなら角都さんと飛段君のところがいい。ああ、リーダー恨むぞ。女の恨みは怖いんだからな。
せめて先輩がいればまだ間に入ってくれるから良かったんだけど、でーだら先輩は数日前に強い人と戦ってきたらしく療養中だ。
パートナーが強制療養中だからと言って、暁という会社は休めるほどホワイトじゃない。前にも言ったけどノーキがある。
だから臨時バイトの身の私がペアを組まされたわけだ。もうリーダーが行けばいいと思う。

それで、だ。私はちょっとだけへまをし見つかってしまった。というのも敵の中に索敵能力の高い忍がいたことが原因だ。
いややっぱりへまをしたんじゃないかって言う目をしたな?全然違うし?一瞬ヤスデに変化するのが遅れただけなんだから。

まあ、まあ、まあ?
砂漠に?ムカデだのヤスデだのが、いるかと問われれば、いないんですけど?いやいることはいるけど、私の変化出来るヤスデとは種類が違うって言うか?
とにもかくにもバレてしまったわけで、どうにか小隊を組んでた4人を倒す。主にサソリが。任せたのは悪かったと思ってるよごめーんね。
そんでええとこの額当て、どこだったっけな。砂漠だし砂かな?そこまで考えて最初に戻る。つまり殴られたわけだ、いつもの尾で。
死体の山に落ちた体が生々しい血の匂いに包まれる。顔の横にまだ抜き取ってない私の千本だのクナイだのが刺さっててめっちゃ危なかったんですけど。


「弱ぇんだから入ってればよかっただろうが足手まといのヤスデよぉ」
「やだよ、狭いし熱いじゃん。でーだらの粘土に爆散させられた方がましだよ」
なにが好きでお前のマントに入らなくちゃいけないんだよ、腫れた頬をさすり立ち上がれば顎がパカリと開いた。
吃驚したのはその中に人がいたことだった。

「サソリ、少年の生首丸ごと食うとかお前の方が趣味悪いんじゃないの」
「あ?」
まさかお前コイツが本体だなんて思ってるかなんて変なことを言い出した。
いやそんな生首が本体だとか思ってないし。這いずってるおっさんが本体なの知ってるし。流石に馬鹿じゃないし。
そんなことをぐずぐず言ってれば背中の面がまた砂埃を立ててあいて中にいた生首少年が出てきた。
生首少年は生首じゃなくてただ黒い服を着て暗闇にまぎれていただけだったようだ。口を動かしているのはその赤髪の少年で?
……あるぇー?


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