ヤスデ | ナノ


▼ 世界の終焉を見届けに



刺殺、爆死、病死……。
仲間が椿のようにぼとぼとと命を散らせる図をヤスデは見てきた。
ちょっと人とは変わった力が使えた私、独り暮らしだった私。
成り行きではあったがあの日家族を捨てることになって、唯一の仲間として唯一のつながりとして身を置き、その能力で稼ぎ一般人とはかけ離れた生活をし、なんだかんだと喧嘩をしたものの多分、恐らく、きっと。私はここが好きだったのだろう。
何処かに消えたと思ったら、世界を破壊し出したトビ。
私は紅く色を変えていく空を穴倉の中で飛段と見ていた。

「世界の終わりってこんな感じなのかしら」
「しらねぇ、しっかしトビの奴も大それたことをしやがったな」
飛段は口元に運ばれてきた野菜に顔をしかめた。とうとう肉じゃなくなっていた。
飛段的に言えば草である。雑草と変わらんそれを、薄く塩でゆでただけの青臭いブツだ。
もうそれだけで肉派の飛段は元気が出ないし、まだ完全にくっ付いているわけでないが、もう癒着する気もしない。肉、肉が食いてぇ…。イライラが募る。
地上は鹿に見張られているし、ヤスデが担いで逃げることもできない。自分を殺したシカマルとかいう子供の居る木の葉の森にとどまっていなくてはいけない事は正直忌々しいことこの上ないのだがどうしようもないのだ。
ヤスデが広げてくれた穴倉はあの地点から少しだけ横に入ったところにあり、地上で働き再びここに帰ってくるヤスデの介護を待つ毎日を送っていたのだ。
空気穴として蝉の幼虫が埋まっていたって位の穴をいくつか開けてもらったがそこから見える空もまた紅かった。

そういえばどうしてヤスデはここんところ帰りが早いのか、効いてみれば至極簡単で意味の分からない答えが返ってきた。
「知ってる?先週くらいから地上ボロボロなんだ」
買えないし盗めるようなものすらないの、だからそれ最後ね。
私お腹すいてないからとオレの寝るベッドに頬杖をつき笑むヤスデに口に入れた食料を咀嚼するのをやめた。
「お前……」
「煩い、私の仲間飛段だけになっちゃったんだから」
一人で死んだらずっとひとりのままな気がして怖いんだもん、だから死後も私のお守りを頼もうと思って。
前払いだからちゃんと食べてね。飛段の横に入り込むとヤスデは天井の穴からのぞく空に映った赤い瞳に意識を差し出した。


「墓守くらい言われなくてもやってやるし」
だから勝手に夢の世界にトんでんじゃねーよ。
飛段の呟きはヤスデの意識に届くことはなかった。


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