ヤスデ | ナノ


▼ 殺す前にちょっとだけ愛してあげる



あれから数日かけて、爆散した飛段のパーツを回収した。
角都さんみたいにすらすらと縫えるわけではないので不格好になってしまっているが、それでもどうにか形にはなったはずだ。
どれだけ探しても右腕だけ見つからなかったのでまあ右腕はもう諦めてくれとしょんぼり報告すれば、あのままミイラ化するよりましだわとからりとした笑顔で帰宅を迎えてくれた。
私たちは未だに穴の中にいた。
というのも地上の鹿達の監視が緩まないことと、飛段が地上に出たら混乱が増すからである。
現在木の葉は他の5大国と連携してなんか死なない男とかめっちゃでっかい敵と戦うことになっていたからだ。怖すぎる。ヤスデは偵察に行き、ついでに食料と水を持ち帰るたびにそう零していた。
彼らが語る話は傍から見たら子供か?と嘲笑されるようなレベルだったが、学のない二人にはそれ以上の上手い言葉が見つからなかったので仕方ないのである。なお、マダラと十尾のことである。
戦場と化した世界でどうにかかっぱらってきた食糧を鹿の縄張り外の穴から何キロも歩いて今日も帰宅したヤスデはきりわけ片腕になった飛段に渡す。
もそもそと食物を貪る男女は学はないが人一倍身体が丈夫だったのと、楽観的な性格をしていたのでまあ何とかなるでしょと、適当に話をして、夜。
地中の…隠れ家とはほど遠い洞穴で身を寄せて眠りについた。
片腕の飛段が自分に持ち込んだ布をかけるヤスデを腕の中に迎える。すり寄るヤスデが胸元で泣いていた。楽観的だろうが寂しさには敵わなかった。


ヤスデは暁のメンバーが一人一人、消えていくところを全部見てきたらしい。
あの角都ですら死んだことを確認し、死んだことを聞いた。
内心動揺した。自分もとうとう一人になったんだなと苦々しい気持ちにさせられたのはまだ新しい記憶だ。残ったのは、オレと行方知れずになったゼツと、マダラの手足だったらしいトビだけらしい。
自分たちが拉致して彼女の環境を壊し、己ら以外の繋がりを切ってしまった為、暁という組織に依存していた彼女は可哀想に、縋るものがもう自分位しかいないのだ。
まあ、助けられた手前、文字通り俺が死ぬまで一緒にいてやるかと、飛段は枕にされてる腕を曲げ、ヤスデの頭を寄せた。
罪悪感と、センパイとしての矜持と、なんだかんだでヤスデのことがすきだったという気持ちを自覚したので。

あと命を懸けて貢物を送っていたサソリがいつか復活して追いかけてきそうだったから。
いや別にオバケとか怖くねーし。


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