ヤスデ | ナノ


▼ カシス・オレンジの中に沈殿する嘘 1



「重要拠点?アジト以外にそんな場所あったの?」
ヤスデが不思議そうに兄貴分のデイダラへと問えば首を縦に振られた。どうやら皆が知っていることだったらしい。
仲間外れはよろしくないのではなかろうかとぶつくさ文句を言うが、不定期で見に行くだけだし「“忘れていた”」と返した彼らに、そこは本当に“重要拠点”なのかと不安になりつつもぞろぞろと気怠そうな仲間たちの後についていった。

「おおおおい人がいるじゃないですか!」
何が“忘れていた”だ!あんまりじゃないかと目の前に群がる子供達にビビりながら横を通り過ぎていく暁の主要構成員どもへとがなった。
鳥ガラというほどではないが任務で向かう国々の子供達よりは確実に痩せている。
視界に入った彼らのすべてが目元を窪ませており、追加オプションでもいいたげにこけた頬で同じ方向を、戦闘を行くペインを見ている。
何より無言のままなのが恐ろしい。イタチや、なぜか最近特に暇を見つけては近づいてくるようになったサソリが話す大蛇丸のところで監禁されている実験体ですらここまで絶望を詰め込んだような…表情をそぎ落とした顔にはならないだろう。
亡霊のような彼らを無視し、講堂のやや丘になっているところに目立つオレンジ頭のリーダーが立つと、さらに通路の陰から多数の子供たちが引き寄せられるように現れた。

ふらりと虫のように集った子供たちの人数を数える。
多数の昏い瞳が今まで見たことがなかった新参者を一心に見つめる為、それから逃れたくてデイダラの後ろに隠れようと身体を縮こませるヤスデをデイダラがそっと隣へと並べる為押し出す。
無慈悲!鬼!と心の中で叫び首をぶんぶん横に振るヤスデだったが力で敵うはずもなく、少しの問答の後観念して彼らに怯えた顔を見せた。
ヤスデが列に並んだことをちらりと横目で確認すると、今まで口を閉じたままだったペインが「忘れていた」と道中ヤスデに答えた一言を口にした。


「リーダー!漸くですね!」
一人が今までの昏さはなんだったのか、待っていましたとばかりのキラキラと輝く瞳をペインへと向ける。
その変わりように思わず目をひんむいたヤスデに、今まで向いていた幽鬼のような視線はすべてペインへと注がれた。
「忘れていた!」
「忘れてた!」
口々に唱えられる忘却の意を乗せた嵐のようなシュプレヒコールに理解が追い付かずビビるヤスデを、早々に――デイダラとは反対側の――自分の隣を陣取っていたサソリが嗤った。


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