ヤスデ | ナノ


▼ 何と愚かな子羊か



「ヤスデはこれ食うか、うん?」
買い物に行ったらおまけとしてもらったんだがオイラ別に好きじゃねえんだよなと鞄の中から取り出されたがんもにきらりと目を光らせたヤスデは飛びついた。
そういえばこいつはベジタリアンだったなと顔を綻ばせて飛びついてきたヤスデの頭を撫でる。肉を使わない料理だといつもほとんど温野菜しか残らないからそりゃこうなるわけだ。
前に爆発に巻き込んでしまって長い髪をバッサリ切り落としたんだが、小南が褒めてからはずっとこけしへアーにアレンジを加える程度にしか伸ばさなくなった。
まあそんな短いけど指通りの良い真っ黒い髪をばさばさと撫でまわし、鞄を机の上で逆さにした。
がんもだけじゃ味気ないと思いおでんの具を買って帰ってきたのだ。振れば、真空パック詰めにされた練り物などが机の上に転がり落ちて行く。

「おお、今日はおでんだねデイダラ先輩!」
「うん、全員がそろうかわかんないけどたまにはいいと思ってな」
得意げにそう答えてやればがんもを手にしたヤスデは「先輩さっすがー!いよっお大臣!愛してる!」だなんてノリ良くべた褒めしてくる。
褒められることなんて暁じゃないから結構くすぐったくて、照れ隠しに腹減っちまったし作っちまおうぜとヤスデに道具を掘り出してくるように頼む。
「ッサー」と敬礼し、勢いよく駆けだしていった上機嫌のヤスデは即興で作ったがんもの歌を歌いはじめればちょうどリビングに入ってきた奴とぶつかることになった。

「……なんだヤスデか」
「おお?イタチお帰り」
ちょうどよかった、今からおでんだから手伝って欲しいんだけどと真空パックのがんもを見せびらかしつつお願いをすれば解ったと首を盾に振りかけたところで停止の声が入った。
「いやいや。オイラ達二人で出来るからイタチは休んでてくれていいぞ、うん」
疲れてんだろ?できたら呼ぶしとイタチの背の向きを変えようと手を伸ばしたデイダラをするりとかわし、オレは何をやればいいとヤスデに聞く。
イタチが自分を一瞥してからヤスデの元に寄ったのに気づき、ぶちんとどこかの血管が切れた音が脳に響いた。

「てめーイタチ!いらねえっつってんだろ!」
「台所はそれほど狭くない、人数的には入ると思うが」
「尤もらしいこと言ってっけど解っててやってんだろ!ほんっとに性格悪ィな!」
オイラが買ってきた食材に触れんじゃねえ糞が!と吠え、ギリギリと歯ぎしりすら聞こえてきそうな形相のデイダラにフンと鼻で笑ったイタチが「鍋はでかい方が良いよな?」と無視してヤスデに尋ねる。
少しだけ広いリビングの中で暗器の応酬を始めてしまった二人にええ…と被害が来ないよう台所に逃げ込んだヤスデを後から入ってきた鬼鮫が見つけた。
「あの二人は何してるんです?」
「解りません、鬼鮫さんおでん一緒に作りましょ……」
机の上の食材持って来てくれませんかと台に隠れたままひょっこりと頭を出したヤスデがリビングの机を指差す。
デイダラの鞄がそばに転がってる事から大体察した鬼鮫は「またですか…」と頭を抱えながら頼まれた食材をその大きな手で掴んだ。


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