ヤスデ | ナノ


▼ 酸素のない惑星に二人きり



「食べちゃったほうが楽じゃない?運ぶのも重くないし」
「噛ミゴタエハ無サソウダガナ…」
ギギ…、と外殻を動かし植物のようなそれをいつもより開いたゼツ君の一人会話にヤスデは青ざめ首を風切り音が聞こえるほどに振った。

毒を受けた私の足は言葉通り毒々しい紫に染まっている。回らないように紐で太ももを縛っているため血行が悪くなっているというのもあるだろう。
ドザリと投げ捨てられ悶絶する私をよそにゼツ君はアジトの奥へと消えて行った。ここまで運んでもらえただけでもありがたいと思わないと。
足の感覚がないためたってもすぐに転んでしまうしどうせ今の時間は私とゼツ君しかいない。体制を整える必要はないのだ。
そう自分を言い聞かせ、自分の部屋まで這いずり救急箱から心配性のイタチさんにもらっていた毒消しを口に放る。良薬は口に苦しというがこれはちょっと異常だろ……。
ポーチから出掛ける前に入れておいた水を取り出し苦味を胃へ流し込もうと一気に水筒である竹を傾けた。

「あーこんなところにいた」
背後から声を掛けてきた白い方に驚き、ぶべべと鼻から気道へと水を流し込んでしまったヤスデが水流に溺れ咽る。
ドアの音とか足音とかしなかったけどどうやってこの部屋に入ってきたんだと息苦しさに涙目で鼻水を垂らしながらヤスデはゼツへと目を向ける。
外殻のせいで横にも縦にもでかいゼツ君が咽る私を無視して露出した紫色の足へ両腕を振り降ろした。
「いってえええええええええ!!」
即効性の毒消しだよ、良かったねヤスデ。にまにまと意地の悪い笑みを浮かべながらぐりぐりと注射器を押し付けてくるゼツ君が「いたい?」と実に楽しそうに聞く。
サソリの部屋から拝借してきたと説明するゼツ君がのた打ち回る私を見て吹き出しそうなのをこらえてやが……ちょっと待って今なんか大変やばそうなこと言った。
「サソリ在宅?」
「居ルワケナイダロ」
「代わりに怒られといてよ、ボク次の任務行ってくるから」
それじゃあね、そう言って最後に思いっきり針を押し込み地面に同化していったゼツ君。
激痛にひぎぃと叫びながらも彼に向かって恨みを込め振りおろした拳が当たることはなかった。



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