ヤスデ | ナノ


▼ Jack in the Sugar.



「デイダラ!ねぇねぇここ行きたい」
ヤスデがトビと徒党を組みオイラの部屋に突撃してきたことで本日の優雅でクールな芸術タイムは幕を閉じることとなった。

「って言ってもオイラ達犯罪者だぞ、うん」
祭りだからか、小さ目の社の前を埋め尽くす様に並べられた屋台を楽しむおちゃらけたトビと背が小さく割かし感情に素直なヤスデという後輩たちのせいで、デイダラはボトムのポケットに手を突っ込んでついて行く。
いつものように保護者役に徹していルデイダラだが、実は自分が一番年下なことを彼は知らない。
そういえばいつの間にか自分の事を「でーだら」と呼ばなくなっていたヤスデ。
彼女特有の呼び方は割と気に入っていたのだが……。
まあいつも自分がそれに「デイダラだ」と突っ込みを返していたせいかと納得する。うん、少し寂しいぜ。

「デイダラ先ぱァい」トビの方は相変わらず独特のイントネーションでこちらを呼んでくる。
ぼうっとしていたデイダラが目線を二人に戻せば目の前に迫っていたでっかな塊に慌ててポケットから手を抜き取り掴む。
「ズバーンとやっちゃってください先輩!」
「いよっ忍界一!」

コイツら爆発物なら何でもできると思ってやがる……。爆遁舐めてんな……?
あいにく投擲じゃない銃はオイラの手に余る。しかもこれ火薬とかじゃなくてコルク銃だから!
「あー…」と曖昧な反応をして返そうとすればトビに何かを耳打ちされたヤスデが変化して白目のある瞳で見つめてくる。
期待に満ち満ちておりキラキラと輝くその眼と仮面の下でニヤニヤと笑っているであろうトビに半ばやけくそになり構えた。

コルク銃の軽めで高い音が響き、落ちたのは2等の焼肉無料券だった。


「悪いヤスデ」
お前肉食えなかったよなとヤスデの顔を窺いながら聞けばコクリと頷かれた。
コイツはトビにやるわとヤスデの隣で自分も銃を構えてはしゃぐ奴を顎で指す。
ばつが悪くなり頭を掻いて誤魔化そうと射的の屋台から少し離れたデイダラについてきたヤスデが袖を引く。
悪かったって、頭を撫でればヤスデがバッと顔をあげた。だが予想外にその瞳はいまだ輝いたままだった。あれ?

わなわなと溜めに溜めていた興奮を吹き出す様にすごいと叫んだヤスデに通行人がびくりとこちらを見た。
お前ら見せもんじゃねえぞ。こちらに顔を向けた人間をゴロツキのように威嚇し睨めば、そそくさとその足をはやめていく。
「はー、すごいなぁ!私の残りで一発しかなかったのに!」
しかも無料券の結ばれてた瓶水めっちゃ入って重そうだったのに。
興奮してどこを当てたんだとぶら下がるいくつもの提灯に無料券を透かし見ながら師匠コツを教えてくださいと頭を下げたヤスデ。
テンションガタ落ちになるよりは良いけどそれはそれで困るんだようん……。
デイダラは自分の微妙なまぐれを呪った。


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