ヤスデ | ナノ


▼ 或る夜、溺れる夢を見た



木の上で寝転がっていた。
真下に広がる光景はどう考えても昔見た木の葉の里だ。
ただそれも図書館で読んだ木の葉の歴史とかいう本にあった写真の中での話だけど……。
「やばいなー」
みんなどこ行っちゃったんだろう、アジトのお引越しの手伝いしてたらこれだもんなぁ……。
角都さんは飛段君辺りにこっそり頼んで賞金首持って来たらお咎めなさそうだけど。
流石に考え甘いかな……、でも動かず勝手に金が入ってくるんだから甘くなるよね?なってくれてもいいと思う、なってください。
私もそんな稼ぎ頭いたらデレデレしちゃうもんねー、どうぞ神様お願いします。
まあとりあえずサソリあたりがブチ切れる気がするからそっちの言い訳を考えるか。
不可抗力なんですの一つしか出ないし何があったかもこれじゃ伝わらない。あーあ、ほんとどーしよ。


暗くなっても演習場で一人修行に励む少年を見る。
忍がみんなこんなに練習しているのかとげんなりしたが、彼以外に人っ子一人いないところを見るとそれはないだろうという事に気づいた。
どれだけ頑張るんだこの子、お腹が空いたとわめくバクテリアたちのためにそろそろ小動物でも狩らなくちゃいけないだろう。
木の上から転がり落ちるように着地する、いたたちょっと失敗した。私一般人だから尻もち仕方ない。
暁に拉致られてから基礎体力は上がったがいまだに水の上たてないし木登りも低い木だけだし。ちなみにヤスデに変化して登った。
背を向けて立ち上がった私に案の定クナイをこちらに向けた少年に謝った。

「ごめん、君の家鼠とか出ない?」
「誰だ」
ヤスデっていうんだ。鼠でないなら野兎とかいるところ教えてほしいんだよ。
疼きだしてるバクテリアたちをどうにか話しつけている状態だから割と切羽つまってるけどむやみに人間を殺したくない。
頼むよーと少年の前で手を合わせればその辺の鼠で良いの?と顔をしかめながら聞いてきた。
何に使うのだと聞きたそうにしていたのでお腹減っちゃってさぁと実はこっそり押さえていた自分の腹の虫を解放した。


「ごめんねごちそうになっちゃって」
少年の家で自分にご飯、バクテリアたちに(勝手に)屋根裏にいた鼠を一匹貰いお互い腹を満たした。
ここは戦争時代の木の葉の里だそうで、少年は孤児だという。
夕飯を誰かと食べたの久しぶりだと笑う少年にそうかと素直に笑った。
鼠を食べさせてる間、周りの気配に集中しなくていいから目の色は変化したままに出来たし怖がらせずに済んだことにもほっとしている。
ちょっとトイレと少年が洗面所に駆け込んでいったが何もすることないし長居は無用だ。
他の人間に見つかったらめんどくさいしまた旅人のフリしないとダメかな。
衣食住の整備された暁結構いいところだったんだなぁとしみじみ思いながら出て行こうと草履を履く、片づけ中だったからマントを置いて来てしまったため少し夜風に背を震わせた。
再度ごちそうさまでしたと戸口に声を掛ければ少年が急いで手を洗って出てきた。
「行くの?!」
「行く行く」
のんびりしてないで一刻も早く帰らないとサソリの傀儡で命が危ない。
独り身の少年をふたたびぼっちにするのはご飯を貰った手前心苦しいが仕方ないのである。
わかってくれたまえとぐりぐり頭をなでてやるとゴーグルをした少年はそうと少しさびしそうに顔を俯かせた後「オレ、オビトって言うんだ」とにっこりと笑った。
「オビトとはまた会えそうな気がする」
修行頑張れよ!
あげられた手をパシンとはたきヤスデへと変化する。とりあえず帰り方を探すため最初にいた木をヤスデの姿で登り始めた。
後ろでうわっとか悲鳴を上げてるオビトには悪いが私こうしないと木に登れないんだよ。



「いってぇ!」
ガンガン響く脳天に思わず手をやる。腫れてたんこぶがこさえられているそこを指がかすりさらに悶絶した。
涙目になりつつ影を作った人物を見る。
「テメー寝てんじゃねえよ!」
さっさとリビングのもん巻物にしまえと尻を蹴飛ばすサソリにぎぃと歯ぎしりする。
正論なんだけどムカつく!サソリが自室へ行ったのを確認してからぐちぐち文句を垂らせば私の襟首に引っかかっていたお面が落ちてきた。
白くてなんか穴3つ空いてるけどトビ先輩のだろうか。お面つけてる人トビ先輩くらいだもんね……。
誰かがお皿と間違えておいたのだろうかと思いつつ、分けるのもめんどくさくて食器と共にその意外に重たいお面を巻物に詰め込んだ。


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