ヤスデ | ナノ


▼ honeyed Black gentle



忍でない私はどうやら人相が割れていないらしい、まあ私のこと知ってるのバイト先の店長位だしね、元蕎麦屋だから頭に帽子だったしぶっちゃけわからないよね、うんうん。
あの怪しいマントを脱げば普通に買い物ができるので、街中をこうやって堂々と歩き、大量に買い込んでいる。
ちなみに今日は鬼鮫さんからのお使いでメモを渡されている。もうリスト全部に線を引いたから帰れる。
巻物に保管したりとかできないし、重いものを持てるほど力が無いので毎回旅行さながらな風体でがらごろと小さな車輪のついたカートを引っ張っている。
一度声を掛けられたが食べ盛りの大きな子供たちを預かってて〜なんて言ったら仄々とした視線で今みたいに応援されるようになってしまった。とりあえず印象は良い方がいいはずと手を振りかえした。

テーブルの上に買ってきた食材を並べ、鬼鮫さんに報告を入れる。顔は怖いが角都おじ…おっと角都さんみたいに褒めてくれるから嫌いではない。
しかもメシウマだから嫁ぎ先も安泰だろう。鬼鮫さんどっか嫁いでも私にご飯作ってくれないかな。自炊面倒なんだよね。
「ん?これ……」確か米買った時におっちゃんが持ってけって詰めてくれたものだったか。
鬼鮫さぁんとパックされたものを台所に立ち貯蔵庫を弄っている鬼鮫さんに見せれば「ヤスデさんは人気者ですねぇ」なんて頭を撫でられる。
確実に子ども扱いされているが私は優しい人が好きだ。これでいい。ゲハハ。
「食べます?」
「私は先ほど食べたばかりなので」
団子なら確かイタチさんが好きだったはずですとツーマンセルを組んでいる相棒が思い出したように言ったのでじゃあそうしますと部屋を出た。
一人で食べたら太る前に食べきれなそうだったしイタチと鬼鮫さんしか今日はいないし。

いつアジトを捨ててもいいように全体的に簡単に作られているがその中でもさらにただの板だろこれってくらいの作りのドアをノックする。
「うちはさん宅配便でーす、ハンコくださーい」
数秒後に無言でドアを開けたイタチさんは私のギャグにノることなく「ヤスデか、おかえり」とだけ呟いた。ちょっと悲しい。
「団子貰ったんで一緒に食べましょう」
「鬼鮫は?」
「お腹いっぱいだそうです」
そうか、呟いたイタチさんの赤い目がすでに団子の山に注がれていることに気付いた。ああ鬼鮫さんカメラ持ってきてカメラ。


「ここの団子もうまいな」
「そうですね兄様」
もぐもぐと子供のように、……いやリスのように頬張るイタチさんが一瞬止まった。すみません冗談です赤い目ぎゅるんって一回転させないでください。
リス兄さんまじで可愛い、イタチなんだけどリスとかハムスターとかあのあたりだよこれ。ゴミとなった串の本数は全く可愛くないんだけども。
まあ問題はそこじゃない、私がイタチさんの脚の間にちょこんと座っている図の方が問題なんだ。
この、縁側でおじいちゃんと孫がアイス食ってる図みたいな……、おじいちゃんって歳でもないから親戚のお兄さんと姪くらいか。
やべーな大人しいイケメンの親戚ゲッチュなんじゃね?おっと涎が。
しかし何で片腕とられて遊ばれているんだろう。ぱたぱた下からはたくから上に乗ってる私の手も必然的に跳ねるわけで、団子のお代わりをすることは諦めたから良いけども。
こんなに器用に団子を頬張るイタチさんがタレを零すような真似ができると思わないから真上で食ってても何ら問題はない、けど。輝くイケメンが真上にいるのは落ち着かない。私は日陰にいたいタイプなのだ。
立ち上がろうと腹筋に力を入れれば遊んでいた腕を放り投げられ腹に手を回された。なんですかお兄様。
再度そこに腰を落ち着けるようになってしまった私が目を細め拘束された腹いせに再びお兄様と呼ぶと団子2ケタを軽く腹に納めてしまったイタチさんが懐かしいなと唸った。
「ヤスデ、今度から兄様呼びに……」
「兄さんで良いですかね」
「まあそれでもいい」
弟君がいるのは話に聞いていたのだが兄様と呼ばせていたのだろうか。
ふぅむと考えてしまった私の心の中を読んだのか知らないが「サスケは兄さんだった」と遠くを見つめて笑んだ。


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