ヤスデ | ナノ


▼ Tragedy in twilight world.



「大体下っ端だからって私たちをパシリに使いますかね普通」
トビ君はまだ強いけど私なんてただの一般人だよ一般人、頭おかしいんじゃないかなあのリーダー。
ねー、トビ君。なんて同意を求めた私に「 せ ん ぱ い 」と最後にハートを投げてきたのでそれを避けつつ「トビ先輩」と言い直せば、私と同じように「ねー」と仮面を付けた頭を傾けながら大げさに同意してくれた。
「ただの木の葉の偵察だし簡単だと思ったんじゃないッスかね?」
「2人とも下っ端で、一人戦力にならない足手まといなんで」
逃げ切ってから余裕を見せてくださいよぉとトビに腕を引っ張られどうにか逃げることのできているヤスデは叫ぶ。
忍として育ってきてないヤスデは木になんて登れないし走るのだって一般人並である。
いつもは不死コンビと共にバイトと称する賞金稼ぎをしている為、逃走時は角都に俵持ちされたり、飛段に俵持ちされたり、ボールのようにパスされたり、俵持ちされたりされたり、して運ばれているからチャクラを吸い取らせる命令を出すことに集中できるわけだが、この細身のトビがそんなことできると思わない。
よってこの手を離されたら確実に死んでしまうので不意打ちの攻撃をされチャクラ吸収の足止め命令すら出せぬまま必死に縋りつき闘争しているわけだが、初めてツーマンセルを組まされたトビはヤスデの事をほとんど知らない。

そもそもイレギュラーな存在なのだ。
何事にも金は必要だからと角都の負担を減らすためにペインが勝手に入れた彼女は眼中になかった。
まあ流石に能力を知らないのは駄目かと言いだし組んだわけだが、動けなさ過ぎる。トビは内心舌打ちをかました。

「ヤスデちゃん、なんか術出せないんスかぁ!」
「止まらないと無理です!」
一人で満足に動けない上術も同時に出せないとか不便すぎる!
コイツを可愛がっているらしい角都の頭が心配になってきたがまずは逃げ切ることが先決か。

木の葉の上忍8人程度を撒くのはたやすいが、今手の内を見せたらだめだ。
仮面の顔のままうーんと唸るふりを見せたトビがぐいっとしがみつくのに精いっぱいだったヤスデの身体をひょいと脇に抱えた。
「これならなんかできますかァ!」
「……、出来ると思いますゥ!」
突然浮き上がった身体に吃驚していたがすぐに「よろしく」と声をあげて後ろへと片手と顔をやるヤスデ。
彼女の伸ばされた手からは何も見えなかったが、次の瞬間後ろを追いかけていた上忍たちがばったばったと昏倒していくのを見てトビは立ち止まった。
最後の一人が足を縺れさせ、フッと白目をむき自分たちの目の前に倒れたのを見てズドンとヤスデを地面に落とした。

「何をしたんスか」
「チャクラ吸い取ってもらいました」
この子たちに、そう言って掌を見せてくる。ヤスデの死角になる角度で写輪眼を発動させたが砂粒より小さい彼らが映る訳もなく。
ただ小さなチャクラの塊がうねうねとゼリーのようにうごめいているだけだった。
どれだ。思わず素の声色で零したが「ああやっぱ見えないですか、バクテリアです」と変わらず掌を指さすヤスデ。
写輪眼で見えないものがあったことに少し驚き、尾獣の捕獲に役立つかと仮面の奥で口元を歪めた。「なんだ、使えるじゃないか」
「あれ、なんかトビ君の声違くない?」
「 せ ん ぱ い でしょう?」
「戻った……」
後程その考えが甘かったことを知るわけだが。


← / →



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -