短編 | ナノ


▼ ヤスデと不死(飛段誕生日)




「だから私言ったじゃん、今回の賞金首は大振りな技じゃ倒すの手間取るから任せてほしいって」
最初から弱らせて回収した方が絶対スムーズだったじゃん!
もーもー牛のように鳴くナマエからつんと顔を背け両耳をふさいだ。
叱られているきれいな銀髪を後ろに撫でつけた男はこの場にメンバーが通れば二度見しかねない程度に少年サイズだった。

「なんだよ、ちょっとナマエちゃんにイイトコ見せようとして失敗しただけじゃんかよォ」
「それで術に正面からぶつかりに行ってたら元も子もないでしょうが!」
ナマエより頭いくつ分か小さくなった飛段は落ちてくる女の高音を敏感にキャッチしては盛大に鼓膜を震わす自分の若い耳に顔をしかめた。
「だから油断をするなと言っただろう」
「角都がもっと早く助けに来てくれればこんなチビにはなってなかったんだけどォ?」
「角都さんのせいにするのはそれこそお門違いだよ」
尻ぬぐいをしてくれた角都さんにまずお礼を言うべきと主張するナマエにさらに顔を背ける飛段を見て、角都が「ガキか」と吐き捨て鼻を鳴らし馬鹿にする。
分が悪いとみてようやく観念したのか、不貞腐れたまま「あー!あー!すみませんでしたァ!以後気を付けますゥ!」と見た目にひどく合った謝罪を投げつけた。

「あと今度からもっと早く助けを呼んでよ?不死とか言っても例外があるかもしれないし」
まだ飛段に不満があるのかこの際だからとぶつぶつ呪文のように零しているナマエだが、その手元は飛段の下衣の裾をポーチから取り出した包帯で草履の少し上に巻き付けている。
雨が降りぬかるんだ地面に触れないよう仕上げとばかりにはみ出た裾を包帯に巻き込み、自身に配給されていた暁の外套を飛段にかけてやった。
先ほどの戦闘で彼自身の外套は細切れにされ、パッチワーク程度にしか使用できなくなっている。
さらに肌寒くなってきた時期だと言う事も相まって小さくくしゃみをしだした彼を自業自得だとしても可哀想かと考えたからである。まあ無意識だったのだが。

「便利、世話焼きなのか」
「……無意識でした。あと私便利じゃなくてナマエです」
そもそも便利って単語は名前として使いにくいですよね?そろそろ名前で呼んでくださいよぉと先ほどの飛段と同じような顔をするナマエに少しだけ口で弧を描いた角都は「とりあえず一日寝て戻らなかったらまた考えるか」とスルーし、宿を取りに行ってしまった。
いつもなら節約したいが為にナマエがいようがいまいが野宿を強要されるのだが、今回の小さな飛段の姿には角都もそれなりに心配をしているらしい。
角都のまさかの爺心にビビり直立不動になった二人だが、ほぼ同時に今後の賞金首狩りに支障をきたすからだと言う事に気づき、ああ角都は角都だったなと互いの肩を叩い慰めあった。



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