短編 | ナノ


▼ 3枚目のチャーシュー




凾烽オ宝石主が同じころの木の葉に落ちて来ていたらの話






身元不明の私を信用しておいてくれたこの里で私は少し前に働き始めていた。
特殊な仕事をやらされるわけでもなく、私はただの配達員だ。
木の葉の地理を覚えられるじゃろうと歯を見せて笑う三代目が眩しい、忙しいのに私のこともいろいろと考えてくれている。本当にありがとうございます。
斡旋してもらって少したってから初めてナルト君という子供と出会った。
まあ最初は警戒されたんだけど、今では一緒に昼飯を食べに行く仲になっている。


職場に行って毎日のように自分の分配されている棚まで行ったが、他のみんなは溢れるほど埋まっているのに私のだけ空だった。
聞けば先輩はお前に頼みたいことがあるんだってと火影様のところへ行くように伝えられる。一体なんだろう。


「これを頼まれて欲しい」



そう言って渡された一枚のカード。
宛名が書いていないので火影様を見れば、ぱかりと合わせた手を開くようなジェスチャーをされた。お茶目な人だ。


「まじですか」
「そうじゃな、届けてくれるか?」
断る理由はないですが火影様こういうのずるいと思うんですよ、もう少し前に言ってくれれば私だってプレゼントの一つや二つ……


「確か、ナルトは一楽が好きだったな」

火影様はとぼけた顔をする。顎をさすっているがその顔確信犯ですね。
ただ今日仕事休ませたのは職権乱用です、普通に申請するのでほんとそういうの言ってください。
心の内を伝えれば笑い飛ばされてしまった。このお方絶対またやる、確信した。
苦笑し「デートしてきます」とそろそろいつもの場所にいるだろうナルト君に会う為一礼をして歩き出した。
いつもの公園で一人遊ぶ金色の子ぎつねを発見した。
お昼休み毎日のようにお弁当をここで食べていたらいつの間にか集合場所になっていた。
回収に入ろうと名前を呼べば顔を輝かせてすっ飛んでくるナルト君。
今日のおべんと何?なんて聞いて来るが残念だったな、私はいまお財布とカードしか持っていないのだよ。


「一楽でぇす」キャー!なんてどっからだしたのってくらい高く歓喜の叫び声をあげて、ナルト君はよくわからないダンスを始めた。
喜びの舞を中断させ手をつなぐ。早く早くと駆け出すナルト君に引っ張られる形で一楽へと向かった。
待て待てお姉さん体力ないんだ走らないでくれ。



ぶらぶらと足を揺らすナルト君のせいでカウンターが少しだけ揺れる。
お行儀よくねとナルトの膝に手を置いて軽く抑える。
くすぐったかったのかんふふと笑ってカウンターの上で組んだ腕に頭を乗せて私を見るナルト君。
そういえば俺お金持ってないだなんてついてから気づくナルト君に「奢りでぇす」と笑えば「ねーちゃん大好き」と引っ付かれた。

「味噌チャーシューで良いの?」
「大盛りがいいってばよ!」
「はいはい」

何でも食べたいものを言ってくれと氷をからころ回せばんふんふ言いながらそう言われた。
流石にそれだけじゃ寂しいので私の味噌チャーシュー並と一緒に餃子も頼んだ。


ずるずると花を飛ばしながらラーメンをすするナルト君がふとこっちを見た。
「ねーちゃん今日どうして一楽に連れてってくれたの?」
貧乏なのに気づかれていたらしい、子供に余計な心配をさせてしまった。
不可抗力なんです、いつもお弁当の中身が質素なのはしょうがないんです。ほんとすいません見栄張れるほどお金ないです!
冷や汗をかきつつも自分のところからチャーシューを一枚ナルト君の丼に乗せてごまかす。
それでも怪しむナルト君の視線が痛い。
仕方なしに食べ終わったら出そうと思っていた火影様からの預かり物をナルト君に渡した。



「誕生日おめでとう」


ナルト君の眉間の皺が消える。
カードを開いてじっちゃんもねーちゃんもだいすきだってばよといつも以上にキラキラ顔を輝かせてナルト君は笑った。




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