宝石とさよなら | ナノ


▼ 78



我愛羅はサンダルを放り投げた。片足はまだ脱げていなかったがじれったくベッドの下で足だけで蹴飛ばして脱いだ。
パラパラとひたすら分厚いそれのページをめくる我愛羅の傍らにあるサイドテーブルには、先ほどプレゼントされた緋宝丸が乗せられている。
数日前に勉強の本だけじゃなくてそういうのも見た方がいいんじゃない?と買ってもらった数冊のうちのひとつであった。
頭の片隅に残っている単語を探し出そうと急ぐが気持ちばかりでうまく捲れない。
癇癪を起こしそうになりつつもどうにか平常心を保ち、震える口で息を吸った。
「サボテン」
口に出した四文字の後の、小さな文字列を目で追っていく。

乾燥地で多く見られるが、熱帯気候などにも分布し――、違う。
葉は退化しているものが多いが茎は食用にもでき――、違う!

花言葉――……



ぴたりと文字を追っていた指を止めた。
人差し指に隠れた文字を一つずつ口に出す我愛羅はシーツに顔を埋めた。
「枯れない、愛」
先ほど目の前でぼそりと呟いてしまったそれをもう一度口に出す。
ナマエは知っててこれを買ったのだろうか。いや、きっと知らないだろう。キンコウも知ってるとは思えない。
母親に愛されていなかったと夜叉丸が言ったことは誰にも話してない。
自分のしてほしいことをわかってくれる察しの良いナマエも、過去のことまでは話すまで解らなかったし無理に聞くこともないから今後もずっとしゃべる予定はない。

ぱたんと音を立てて閉じた図鑑を抱える。
血は繋がってないが、ナマエはボクのことを確かに息子だと言った。
じゃあナマエは……、ナマエは!


「お母さん、僕も愛してる!」

ボクの二人目のお母さんはずっとずっと愛してくれる。
我愛羅はぎゅうと大きめの枕に皺を作った。ナマエが来てから何度目かのうれし涙が頬を伝って行った。


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