宝石とさよなら | ナノ


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「……漸くか、お前だなマタン?」
「そ。チクマはあんな状態だしシュデンとテッカンは戦争準備で走り回ってるからちょいっとね」
ふんぞり返るサソリをひと睨みしてから、ナマエは封筒から取り出した書類に目を落とす。
記載されていた内容はたった一つ、軍事訓練のことである。
これは心的外傷後ストレス障害を軽くするため、アカデミー生なら必ず受けねばならない授業だったがナマエは侍や忍でも、ましてやこちらの世界の人間でもない。

受けたことがないのはいくらか話せば理解ができた。何より考え方が甘い、子供でもここまでのんきな思考をしている人間はこの世界では珍しいのだ。
今までやむを得ず戦闘を続けてきたが、そのたびに疲弊し傀儡の様に中身を減らし空になっていくと嘆く我愛羅がこれを受けさせればナマエを忍にしてしまうのだと悩んでいたが、尻が重すぎるとサソリは思っていた。
そういうことは生き延びることができた場合の贅沢なのだ。ひっぱたいてでもさっさと受けさせるべきだったな。

……そこまで脳内で他者を嘲笑し続けて、自身の身が、考え方が砂隠れ主体に戻ってきてしまったことに気づき、オレも大概かと鼻を鳴らした。
アドバイスしてやって、助けてやって、気を使って……甘いのは自分もではないか。
周囲はナマエを筆頭にそれでも受け入れてくれるだろうが、一度出ていった身としてはプライドが邪魔をし、この居心地のいい空間を認めることがなかなかし難い。

「口利きするならもう少し早くやっとけよ、付け焼刃じゃ使い物にならねぇだろ」
「大丈夫、ナマエちゃんなら出来るよ」
「んな無責任な……」
「……ハァ、時間外労働も覚悟しとけよナマエ」
まだ我愛羅は知らねぇだろうしひと悶着あるぞとサソリはため息をつきながらナマエを脅しておいた。


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