宝石とさよなら | ナノ


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「サソリ、“四体目”を許可する。サポートにつくからアレの情報教えて」
はるか後方に彼らが逃走できたのを確認したナマエが防戦に徹底していたサソリへと叫んだ。
その声に反応したサソリは左から迫る頭部を踵で砂上に撃ち落とすと動きづらそうにしていた外套を後方へ投げ真新しい身体をほぐす様にガシャリと仕込みを展開させた。
待ちくたびれたと悪態をつくも、ハンデをなくした身体はやはり軽い。自身の正体を隠すためとはいえ他人の管理していた傀儡で戦うのは負担だった。
どうせ人間は殺すことはできないのだ、里へ帰ったらその辺をあの憎たらしい眼鏡女と交渉しようと決心したサソリが胸を開き傀儡三体を核と直接つなげ両手を開けた。

長い年月をかけ風で肌を削られた今にも倒れそうな奇岩に縄状の仕込みを刺し、そこを支点に地上にいたナマエを回収し宙に浮く。
考えうる中で一番厄介な敵を相手にこの……お荷物を庇ったまま戦えるだろうかと眉間のしわを揉み解した。
切れば分裂し、砂上を歩けば一番でかい足音について来て、毒霧で動きを止めたところを丸のみするじつにめんどくさい蚯蚓だが集団で狩りをするなんて記録にはになかったはずだが……?
さてどうするか、このまま防戦一方だと手数に押され身動きが取れなくなるもの必至だったが毒は効かず切り刻めないとなれば毒霧で動きを止められることはなくとも自分に決め手となる術はない。
「テメェ術はあれで全部だったよな?」
「……最大火力はアンタに向けた攻撃が精一杯なんだけど、もしかして意味ない感じ?」
「切れねぇから押しつぶすか溶解するしかねえんだが、一番ちっこいの一匹がいっぱいいっぱいってとこか」
おまけにしつこいから里に逃げ込めば被害甚大だし仕込みが完璧じゃなくても“十八番”のメンテナンスをしておけば良かったと後悔するも遅い。
頭を潰すのはどうかと提案するナマエに即座に却下し、岩で潰せる大きさならよかったんだがこのでかさじゃ無駄骨なだけだぜと鼻で笑われればナマエもえぇ……と思わず声を洩らして頭を悩ませる。
砂地の音が無いから今は見失っているようだが探る様にいつこの休息が終わるかわからない。暴れている尾が岩に当たれば地上に足をつかなければならなくなるからである。
どうせなら先手を取った方が後々デキる事がいくらか増える。動くなら五体全部が自分たちを見失っている今だった。

「おいナマエ、オレが直々にサポートしてやる」
とりあえず眼鏡女が状況判断能力が高くこいつらに特攻出来る援軍を向かわせていることを祈って一体でも数減らしていくぞと気合を入れ直し、チャクラ糸を自身の胸から伸ばしナマエの背へ吸着させていった。


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