宝石とさよなら | ナノ


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まあサソリの言い分はごもっともだったのでそれ以上尋ねても野暮だろうと口を閉じ麻のスカーフをぐっと鼻辺りまで持ち上げた。
里は高い絶壁に囲まれているからせいぜい旋風程度だが一歩外に出ればこれだ。木の葉とは交易があるから整備もされているし通りやすかったが向かう先は中央の遺跡である。
手入れもちゃんと手配している為老朽化の心配はないだろうが道中がこれだとやはり私が追加で派遣されるのも無理はないだろう。
通信もある為なんらかの問題が起こってもすぐに対処できるのは強みだ。それに、長年砂漠で暮らしている為彼女たちにはわからないだろう不便さにも私なら気付ける。
「開催国も大変だよねぇ、サバイバルだとか言いながら場外…塔内での乱闘は罰則だもんね」
「仕方ねえだろ、まあ三代目辺りからこの方針だな」
同盟関係を強固にしていった手前争い事は避けなきゃなんねえんだろと至極つまらなそうに言ちたサソリに「私全然残念だと思ってないからね?」と念を押し確認する。危なくないならそれに越したことないじゃん。
そんな私の答え方が予想通りだったのか、はたまた呆れかえっているのか。多分その両方だろうがじっとりとした視線をこちらに投げるとこれだから忍崩れはつまらんとばかりに顔を背けて速度を上げて行く。
それなりに過ごしてきたとはいえ生まれた時から巫女の足場が通常の物として育ってきたサソリにかなうはずもなく、おいてかれないよう必死に足を運ぶ。

「大体ちゃんと逃げ水の塔へ向かっているかなんてわかんねえだろ」
その名の通り塔が見えだし駆け寄るも蜃気楼のごとく距離は縮まらず、まるで自分達から逃げる様に移動しているんじゃないかとまで思わせるような場所に建つ遺跡である。
土地勘がなければ里の忍も辿りつけないその場所を指定したは良いもののオレが案内することをまるで疑っていないナマエに危機感が足りないだのと小言を加える。
契約が切れた後真っ先にこの素体で人傀儡を作ろうとしているのだ。顔は多少整形すればいいが四肢の欠損は避けたい。
オレが殺すまで死ぬなよなんて人格破損まがいの事を口にするサソリにナマエは一瞬キョトンととぼけた顔を見せ、「だってメリットがないじゃない」と答えた。
「今の状態じゃ殺せないから人傀儡にも出来ないでしょ?争いごとを起こした時のデメリットの方が大きいし……」
流石にそこまで考え無しなわけないと思ってるからとさもそれが当然のようにあけらかんと答えたナマエに頭を抱え首を振った。やはりコイツは考えが甘すぎる。
「そうやって全部信用してるといつか痛い目……ああ、もうみたんだったな」
人柱力だった小僧に裏切られたんだったかと嘲笑すれば、ピクリと眉を動かしたものの無視してやり過ごそうとするナマエ。
尻拭いをこっちにさせんじゃねえぞとからかい甲斐のある素材に満足そうに目尻を下げると足を取られまくる素人同然の歩みにさらに嘲笑しつつ少しだけ速度を下げてやった。


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